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On the Production
by 井口健二
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■そして私たちは愛に帰る、TOKYO JOE、デス・レース、永遠のこどもたち、ティンカー・ベル、ディー・ウォーズ、ラット・フィンク
ギレルモ・デル=トロの製作によるダーク・ファンタシー。
孤児院の出身で幸せをつかんだ女性が、廃止された孤児院を
再興しようとするが…
主人公は、海辺の孤児院で育った女性。明るく元気だった彼
女はやがて里子に出される。そして夫と子供にも恵まれた彼
女は、医師の夫の力も借りて廃止されていた孤児院を再興す
るために夫と一人息子と共に帰ってくる。
ところが、元々イマジナリーフレンドのいた息子は、その環
境の変化からか新たな想像上の友達を作り出してしまう。一
方、ソーシャルワーカーと名告る老婆が家を訪れた辺りから
何やら不穏な雰囲気が巻き起こり始める。
そして、孤児院の再興を祝すパーティが行われている最中、
息子の姿が消える。その失踪には警察も捜査に入るが、息子
の行方は杳として判らない。しかもその捜査の過程で、主人
公が居なくなって後の孤児院で起きた忌まわしい出来事が浮
かび上がってくる。
という展開に、さらに霊媒師なども登場して物語はオカルト
ホラーの様相を呈してくる。確かにこの辺りでは背筋がぞく
ぞくするような恐怖感も味わえ、その演出テクニックも見所
の作品にもなっている。
しかしこの作品は、飽く迄もダーク・ファンタシーとジャン
ル分けするべきものだ。最終的に物語は、超自然的な部分と
心理劇との狭間に置かれるものとなっている。イマジナリー
フレンドはその触媒のようなものとも言える。
脚本は、セルシオ・G・サンチェスのオリジナルから、ファ
ン・アントニオ・パヨナ監督が自分のテイストに合わせ練り
直したとのことだが、我が子を思う母親の心理を見事に描き
出している。そしてこの脚本を一読したデル=トロが、直ち
に製作を決めたほどの作品だ。
物語は、デル=トロ監督の『パンズ・ラビリンス』に通じる
ところもあるが、全体的には『ピーター・パン』をモティー
フにしたもの(邦題はネタバレ)で、その結末には思わずや
られたという感じもしてしまった。そこには『パンズ…』と
同じ感動も用意されている。
しかも本作には、それなりの現代を反映した部分もあって、
その点では『パンズ…』を越えているとも言えるかも知れな
い。宣伝では、『アザーズ』や『シックス・センス』が引き
合いに出されると思うが、本作はもっと重くやるせない側面
も持っている作品だ。
主演は、『海を飛ぶ夢』や『美しすぎる母』に出演していた
ベレン・ルエダ。また、ジェラルディン・チャップリンが、
2006年2月に紹介した『ブラッドレイン』に続いて謎めいた
役柄でゲスト出演している。
『ティンカー・ベル』“Tinker Bell”
ピーター・パンの相棒ティンカー・ベルを主人公にした新シ
リーズ(四季の4部作が予定されている)の第1話(春編)。
ティンクの誕生から最初の仕事の達成までが描かれる。
赤ん坊が初めて笑うと妖精が1人生まれる。そんな言い伝え
の通りピクシーホローの森の中で、その妖精は赤ん坊の笑い
声によって誕生した。誕生した妖精が最初にするのは女王に
仕事を決めてもらうこと。そしてその妖精はもの作りに任命
され、ティンカー(鋳掛け屋)ベルと名付けられる。
しかしティンカー・ベル(ティンク)は自分の仕事が気に入
らない。もっと外の世界(メインランド)を見てみたいのだ。
ところが外に向かう妖精たちの仕事を手伝ってもなかなかう
まく行かない。しかもその内に大失敗までしてしまって…
原作のティンカーの名前は騒がしい子という意味で付けられ
たと思うが、ここではさらに元の意味に戻って鋳掛け屋(の
打ち鳴らすベル)、だからもの作り担当とはなかなかうまい
設定だ。しかも自分の仕事に不満というのは、現代の若者の
反映でもあるのかな。
でも彼女の持って生まれた才能は紛れもなく、それによって
彼女は妖精たちの危機を救うことにもなり、そして外の世界
に飛び出す日もやってくるのだ。そんな、若者に夢と希望を
与える作品とも言えそうだ。
因に本作では、ティンカー・ベルが初めて台詞をしゃべる。
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09月28日(日)
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