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On the Production
by 井口健二
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■キズモモ、東京残酷警察、シルク、ワイルド・バレット、女工哀歌、春琴抄、ゾンビ・ストリッパーズ、文七元結
時間は2時間2分と多少長目にはなっているが、それだけの
ものは描かれている作品だ。
脚本・監督は、南アフリカ出身のウェイン・クライマー。ハ
リウッドからは距離をおいて活動している監督だそうで、前
作では出演者がオスカー候補になり注目されたが、それでも
本作の製作では、『モンスター』などのメディア8を製作会
社に選んでいる。
因に本作は、ニュージャージーが舞台の物語なのに、主要な
シーンをチェコのプラハで撮影したとのこと。それはもちろ
ん製作費の削減の目的でもあるが、ハリウッドに背を向けて
いるという感じもするものだ。
共演は、2006年8月に紹介した『アダム』などのキャメロン
・ブライト。強烈な印象を残す子役だが、2006年米国公開の
本作の後では、『ウルトラヴァイオレット』『Xメン3』な
どにも重要な役で出演している。
他には、『ディパーテッド』のヴェラ・ファーミガ、『ブロ
ンクス物語』のチャズ・パルミンテリらが登場。特に、ファ
ミーガの女っぷりが良かった。
前半にはちょっと首を傾げるシーンも登場するが、最後には
それがピタリと納まる。そんな脚本も良い感じだった。

『女工哀歌』“China Blue”
中華人民共和国におけるジーンズ衣料の製造現場を取材した
ドキュメンタリー作品。
スポーツウェアの製造に関るアジア搾取の問題は、2000年の
映画『ズーランダー』の背景にもなっていたから、問題が発
覚したのはその前ということになるが、当時はマレーシアで
行われていた搾取は、今や中国に舞台を移しているようだ。
しかも、スポーツウェアの時はブランドが発注主だったのに
対して、今回の発注元はウォルマート。そのセール品の製造
ということでは、もはや買い叩きは当然で、その原価はどん
どん低下して行くことになる。
実際、作品の中でも、ジャケットとジーパンのセットの価格
交渉のシーンがあったが、その妥結額は$4.10、ジーパンだ
けだと1$台だという。それを製造するのだから、そこから
工員に払われる賃金は押して知るべし。
さらに、納入期日に間に合わせるための徹夜の残業などは日
常だが、それに残業手当が出る訳でもなく、しかもその微々
たる賃金は3カ月以上の遅配となっている。
そんな状況でも、独りっ子政策の下で次女として生まれた少
女たちには、教育を受ける機会もなく、16歳の就労年齢に達
すれば、農村から都会に来てこのような工場で働くのが、唯
一の生きる術となっている。映画の中には、14歳で偽造の身
分証明書を持ち、すでに働いて2年という少女も紹介されて
いた。
そんな過酷な条件の中でも、ベテランになればそれなりの給
料も貰え、中には別の工場で働く少年と共に将来を誓いあっ
ている少女もいる。彼女らの夢は、いつか自分たちの工場を
持つことだというが…
取材対象の工場を経営しているのは、元は地元の警察署長だ
ったという男性。つまりそういうところに利権が集まり、そ
ういう連中だけが超え太っているという図式だ。ボールに一
緒盛りの食事(代金は給料天引き)を食べている少女たちの
姿に並行して、豪華な会食をする経営者の映像が写し出され
る。もちろんそれはより良い契約を得るためのものだが…
搾取というのは、何時の世にも在ることとは思うが、共産主
義を唱える国家の実情がこれでは余りに情けない。オリムピ
ックで浮かれている国のお粗末な実態が描き出される。

『春琴抄』
谷崎潤一郎原作による名作の映画化。過去には著名なものだ
けで5回の映画化があるようだが、今回は1976年山口百恵、
三浦友和の共演作以来、32年ぶりとなる作品。
美貌だが盲目で我儘な師匠と、それに仕える奉公人の男。こ
の2人の崇高の愛を描いた物語を、今回は『スキトモ』など
の斎藤工と、9月公開『ロックン・ロール・ダイエット』な
どの長澤奈央の共演で映画化した。
物語については、改めて書くこともないだろう。谷崎という
ことで耽美的な側面が取り上げられることの多い原作のよう
だが、映画化は飽く迄も崇高な愛を捧げ通す男の物語として

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08月10日(日)
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