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On the Production
by 井口健二
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■胡蝶の夢、オンリーピック、フレフレ少女、ゲット・スマート、フェルメールを探して、三本木農業高校馬術部、ハルク、攻殻機動隊
は007シリーズのQことジェフリー・ブースロイド少佐の
もじりのようだ。さらにこの2人が活躍するスピンオフ作品
も製作されている。
物語は、スマートがまだ情報分析担当官で、彼はエージェン
トを目指して昇進試験を受け続けているが、なかなか昇進が
認められないところから始まる。しかしある事情から、つい
にエージェントとしての出動命令が出されるが…
つまり、オリジナルでも妙に頭でっかちでエージェントとし
ては問題のあるスマートが、何故エージェントになれたかと
いうところから物語が始まるもので、この辺は当時からのフ
ァンとしても納得のストーリー展開となっている。
そして映画では、いまだに続くケイオス(なお字幕では“カ
オス”となっており、これは確かにカオス理論などのKhosか
ら来たものではあるが、原語もケイオスと発音しているし、
やはり昔から親しんでいる呼び名にして欲しいものだ)との
闘いが描かれる。
このケイオスとの闘いが、もちろんパロディ一杯に展開され
るものだが、実はこれが結構まともで、スパイ映画としても
ちゃんと観られるようになっているのには感心した。
これは、最近製作された『アイ・スパイ』などが無理にコメ
ディタッチにして失敗したことへの反省もあるのかも知れな
いが、元々がコメディの本作では、見事にそれがはまってい
る感じにもなっている。
そして登場するパロディやギャグには、見事にオリジナルシ
リーズの味を出しているものもあり、さらに007を元ネタ
にしたような大掛かりなアクションのパロディもあって、こ
れは全編楽しめるものになっていた。しかもそれらが、おそ
らく元ネタを知らなくても笑えるように作られているのは大
したものだ。
アメリカ製のコメディが日本でなかなかヒットしない理由の
1つには、日米の文化の違いもあるものだが、本作はそれを
超えて笑える作品になっている。何とかヒットさせてスピン
オフの“Get Smart's Bruce and Lloyd Out of Control”も
公開してほしいものだ。
『消えたフェルメールを探して』“Stolen”
1990年春。ボストンのイザベラ・ステュワート・ガードナー
美術館から評価総額5億ドルとされる美術品が盗まれた。そ
の中には、レンブラントが唯一海を描いた『ガリラヤの海の
嵐』や、総作品が35点しか確認されていないフェルメールの
『合奏』などが含まれていた。
ガードナー美術館では、その発見に500万ドルの懸賞金を出
しているが、未だにその1点も発見されていない。そして、
創設者から「どの作品も置き換えたり動かしたりしてはいけ
ない」と遺言された美術館の壁には、現在も空の額だけが掛
けられている。
本作はそれらの美術品の捜索を巡るドキュメンタリー。本作
では、その捜索に従事した絵画探偵ハロルド・スミスの仕事
ぶりを中心に、美術館の来歴やフェルメールの絵画そのもの
の鑑賞の仕方などが解説される。
本作の監督レベッカ・ドレイファスは、子供の頃にフェルメ
ールの『合奏』に魅せられ、盗難事件には激しく心を痛めた
そうだ。それが今回のドキュメンタリー製作の動機となって
いるもので、探偵スミスの協力も得て見事な作品を作り上げ
ている。
その内容は、美術品盗難事件の深層に迫るものもあり、また
2004年2月14日付で紹介した映画『真珠の耳飾りの少女』の
原作者トレイシー・シュヴァリエが、フェルメールへの思い
を語るインタヴューなども挿入されて、多岐に渡る関心が描
かれている。
一方、美術館の協力で、開設に至るイザベラとヨーロッパの
エージェントとの往復書簡が開示される。そこでは、当時の
ボストン社交界の華でもあったイザベラが、この美術館に賭
けた執念のようなものも感じられ、その点でも興味深いもの
があった。
なおこのイザベラの書簡の朗読を、最近ではグウィネス・パ
ルトローのお母さんと言った方が通りの良い、1976年『フュ
ーチャーワールド』や、2000年『ミート・ザ・ペアレンツ』
などの女優ブライス・ダナーが担当しているのも懐かしいと
ころだ。
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07月06日(日)
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