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On the Production
by 井口健二
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■蛇にピアス、おくりびと、ギララの逆襲、ブーリン家の姉妹、窓辺のほんきーとんく、ベティの小さな秘密、背/他2本、P.S.アイラヴユー
景に、さらにもう1人のブーリン家の娘メアリーを絡めた物
語が描かれる。
フィリッパ・グレゴリーの原作は、日本では秋口に翻訳刊行
予定のようだが、原作では、特に姉妹でヘンリー8世を奪い
合うことになるアンとメアリーの愛憎劇が強烈に描かれてい
るようだ。
その原作の映画化ではあるが、映画は比較的そのようなどろ
どろした部分は押さえられていて、それより当時のイングラ
ンドの貴族の生活や、特にブーリン家の置かれた立場のよう
なものが丁寧に描かれている。
まあ、結局ところはそれをちゃんと描かなければ物語全体も
理解できなくなってしまうものだが、その分だけ重苦しさは
軽減されて、特にポートマンとヨハンセンの姉妹関係が、美
しく愛らしく描かれているのは、ファンにとっては喜ばしい
ところだろう。
それにしても、この2人の関係が、実年齢でもポートマンの
方が年上だったのは意外だったもので、僕はてっきりヨハン
センがアン役と思い込んでいたので、観始めではちょっと混
乱してしまった。
でもまあ、アンもメアリーもかなり数奇な運命を辿って行く
物語で、ポートマンとヨハンセンがそれを見事な演技力で見
せてくれるものだ。因にこの2人は、製作中のオムニバス映
画“New York, I Love You”では、一緒に監督デビューも果
たしている。
共演は、エリック・バナ、デイヴィッド・モリッシー、クリ
スティン・スコット・トーマス、ジム・スタージェス。なお
撮影は全編HDで行われたものだそうだ。
『窓辺のほんきーとんく』
社会人になって数年、生活も安定してきて結婚話も出てきた
青年が、突然勤務先が倒産、婚約者との連絡も取れなくなっ
てしまう。そんな主人公の下宿に、大学時代の映画サークル
で監督志望だった先輩が転がり込んできて…
自主映画界で異彩を放つ監督・堀井彩が描く“性春群像劇”
…という見出しのあるプレス資料をもらって上記の内容の作
品と言われると、基本的にただのファン上がりで、いわゆる
映画青年ではなかった自分としては、ちょっと退いてしまう
ところがある。
実際、映画青年の見果てぬ夢というか、リビドーの残り滓み
たいなものがグチャグチャと垂れ流されているだけの作品も
見せられたことがあるし、またそんなものを見せられたら適
わないな…というのが、正直な気持ちだった。
ところがこの作品は、見事にそのグチャグチャした部分を昇
華させてしまって、ある種の純粋な男女の恋愛関係を描いて
いる。それは最近の殺伐とした風潮の漂う現実の中では、ち
ょっと愛しさすら感じさせてくれる作品だった。
物語の続きは、監督志望の先輩が自主映画で一旗挙げようと
企み、スタッフ・キャストをオーディションして人を集める
が、まだシナリオができていないことが判明。メムバーは一
旦解散となるが、そこにいたヒロイン役の女性が部屋に居座
ってしまう。
しかも、監督はシナリオハンティングのために旅に出てしま
い、残った2人は徐々に接近して男女の関係にまでなってし
まうのだが…戻ってきた監督が提示したシナリオは、最後に
ヒロインの本番シーンがあるというものだった。
それを主人公は、助監督として間近に見届けなくてはならな
くなる。つまり主人公にとっては、彼女への愛と映画製作の
夢という究極の選択みたいなことになって、その葛藤の物語
が適度にコミカルに展開される。
映画は悪ふざけもなく、また主人公たちを囲む人々のさまざ
まなエピソードも煩くもなくバランス良く挿入されて、全体
的な構成も良い感じがした。本作はレイトショー公開向けの
小品だが、このレヴェルを保ってくれるなら、監督の次回作
も期待したくなったものだ。
出演は、『バレット・バレエ』などの辻岡正人、元グラビア
アイドルでAV出演もある吉沢明歩、『神様のパズル』の安
藤彰則など。そこそこ個性的な俳優が適度の演技を見せてく
れていた。
『ベティの小さな秘密』“Je m'appelle Elisabeth”
昨年3月10日付ホームページで、フランス映画祭関連作品と
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06月29日(日)
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