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On the Production
by 井口健二
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■ハード・リベンジ、俺たちダンクシューター、アイアンマン、レス・ポール、能登の花ヨメ、歌え!パパイヤ、The 11th Hour、空想の森
だそうだ。
そんな事実の提示から始まる作品だが、映画には、90歳を過
ぎても現役で毎週ライヴ演奏を行っているというレス・ポー
ルの元気な姿が登場して、実は、小学生の頃に初めて買った
LPがレス・ポールとメアリー・フォードだった僕には、嬉
しい限りの作品だった。
レス・ポールは元々カントリー音楽のギタリストだったが、
他にはない音を追求していく内に、単にマイクを繋いだだけ
ではないソリッド・ボディのエレキギターに辿り着き、さら
に多重録音やマルチトラック録音を発明して多彩な音楽を作
り上げて行った。
その業績は、5度のグラミー賞受賞や、後世のロック・アー
ティストに影響を与えた人物として「ロックの殿堂」入りを
果たしている他に、ミュージシャンでは唯一、発明王エジソ
ンらと並んで「発明家の殿堂」入りも果たしているというこ
とだ。
そんなレス・ポールの半生が、現在の映像や1950年代、60年
代のアーカイヴ映像などで再現される。実は僕自身は、レス
・ポールの音楽は聞いているが実際に演奏している姿は見た
ことがなかったもので、特にメアリー・フォードと一緒の姿
は感動的だった。
また、フォードと2人で多重録音の苦労話などを楽しそうに
話している姿も僕には堪らないもので、そのフォードとは後
年離婚したが、その辺の事情が説明されていたのも嬉しいこ
とだった。
そして何よりこの映画では、上記の映像の間に、大ヒット曲
の“How High the Moon”を始め、多重録音が見事な“The
World Is Waiting for the Sunrise”、さらには“Get You
Kicks on Route 66”“Tiger Rag”“Mocking Bird Hill”
“Vaya Con Dios”“My Blue Heaven”など40曲近い名曲の
演奏が聞けるのも嬉しいところで、レス・ポールのファンに
は最高の贈り物と言いたくなる作品だった。

『能登の花ヨメ』
東京育ちの女性が、結婚相手の都合から能登半島の過疎の町
に赴き、そこで花嫁として受け入れられるようになるまでを
描いた人間ドラマ。
主人公は、広告代理店の派遣OLとして第一線でキャリアを
積んできた女性。しかし結婚を機に退職して、海外出張する
婚約者が帰国したら挙式、以後は平凡な主婦の座に付く予定
だった。
ところが、婚約者を出張に送り出そうとしたとき、彼の携帯
電話が鳴り、能登で1人暮らしの母親が交通事故で足を骨折
したことを伝えられる。そこで主人公は、婚約者に代って母
親の世話をするため能登に向かうことにするが…
そこには、地方に特有の因習や、ややこしい近所付き合いが
待ち構えていた。しかも能登には、2007年3月の大地震の傷
跡がそこかしこに残り、その影響や過疎によって伝統の祭り
も行えなくなっているような状態だった。
そんな中で、東京からやってきた1人の女性の行動が、いろ
いろな波紋を広げて行くことになる。そんな女性の主人公を
田中美里が演じ、脇を泉ピン子と内海桂子が固め。さらに松
尾貴史、本田博太郎らが共演している。
映画の企画は2004年に立上げられて、実は能登地震が起きた
のはクランクインの直前だったようだ。しかし、物語はそれ
による状況の変化も巧みに取り入れて、お陰で企画された以
上に骨太な作品が出来上がった感じもするものだ。
この他、地元特産のコケ(茸)鍋の作り方をフィーチャーする
など、地元への目配りは充分に感じられる。そして映画は、
5月に能登で先行公開されており、すでに3万人以上を動員
しているということも理解できるところだ。
ただし、その能登での共感が全国でも得られるかというと、
これがなかなか難しい。作品自体は悪くないし、特に伝統の
祭りを絡めた展開はうまく作られてもいるものだが、それだ
けで全国規模での共感には繋がるものかどうか。
従って、ここは一つ何らかの手を打つ必要がありそうだ。全
国公開は8月下旬に予定されているようだが、それまでに作
品を認知させるには、例えばコケ鍋でアピールするとか、相
当のプロモーションで盛り上げて欲しいところだ。

『881 歌え!パパイヤ』“881”

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06月22日(日)
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