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On the Production
by 井口健二
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■Movie-High 8、愛流通センター、コドモのコドモ、Made in Jamaica、《a》symmetry、ストリート・レーサー、Sex and the City
れず、どんどん時が過ぎていってしまう。
自分が子育てをした親として、このように無関心でいられる
かということにはいろいろ考えてしまうところもあったが、
実は物語は見事に子供の視点に立っていて、その物語に引き
込まれて行く内に自分が親の立場であったことを忘れてしま
った。
それくらいに見事に子供のドラマが展開し、特にいろいろの
事情から子供たちだけで出産を行わなければならなくなって
しまう状況から、その後の事後処理に至るストーリーは、感
動的ですらあった。
もちろん、現実にはあってはならない物語だし、現実がこの
ようにうまく行くこともないお話ではある。しかし、そんな
言ってみれば反社会的な物語を、この映画は見事にメルヘン
として昇華させている。
しかもそこには、性教育の遅れが招く出来事としての批判的
な精神も明確にされており、全体として納得できる作品にな
っていた。
『MADE IN JAMAICA』“Made in Jamaica”
1970年代にピンク・フロイドなどのドキュメンタリーを手掛
け、80年代以降は第3世界を中心に活動を続けてきたフラン
スのドキュメンタリー監督ジェローム・ラペルザが、カリブ
海に浮かぶ独立国ジャマイカの現状とレゲエ音楽の歴史を追
った作品。
レゲエ音楽を追った作品は既に何本か見ているが、今回は本
格的なドキュメンタリストによる作品とのことで期待した。
しかしそれは、多分監督は「矛盾に満ちたジャマイカの現状
を描いた」と主張するのだろうが、観客にも混乱が避けられ
ない作品になっていた。
確かにジャマイカの現状は厳しいものであるようだ。そこに
は暴力や貧困が蔓延り、貧富の差も広がり続けている。そん
な中でのいろいろな意見を、レゲエ音楽のミュージシャンた
ちの発言と演奏で綴って行く。
だがこの作品で、その矛盾が充分に描き切れたかどうかは、
疑問に感じる。一方、この作品で監督は中立の立場を貫こう
としているようで、それはドキュメンタリーの基本のように
言われることもあったものだが、この作品にそのやり方が良
かったのかどうか。
確かに、マイクル・モーア式の自己主張だけの作品も困りも
のだが、詳しくは知らない国の状況を、このように羅列的に
事象だけを提示されても、一般の観客としてそれをどのよう
に解釈していいのか、それも解らなくなってしまう。
ましてや遠い日本の観客には…というところだが、作品自体
はレゲエの演奏をふんだんに取り入れたもので、それが楽し
みな人たちにはそれで充分なのかも知れない。でも、それが
この作品の評価になってしまうのは、果たして監督の意図な
のだろうか…
歴史の矛盾や宗教の矛盾、社会国家の矛盾までいろいろな矛
盾が描かれている。それが、ジャマイカという国を知る上で
重要なことであることは確かだろう。それを音楽に乗せて描
くと言うのは、方法論としては間違いはないと思う。
しかしこの国には、その矛盾が多すぎたようだ。その全てを
描き切ることには、この作品は必ずしも成功していないよう
に思える。ただ音楽を聴くだけならそれで充分な作品だが、
そこに描かれたものの重さを僕は消化し切れなかった。
『《a》symmetry』
高校時代にお互い写真部で実力を競った2人が、ある切っ掛
けで別々の道を歩んで行く。やがて2人は偶然の再会を果た
すが、そこにはいろいろなドラマが待ち構えていた。
主演の和田正人と荒木宏文は演劇集団のD−BOYSに所属
し、それぞれテレビシリーズの主演や準主演で、特に女性に
人気が高いようだ。そんな2人の共演作ということで、作品
のアピールしようとする観客層にはそれで充分というものだ
ろう。
ただし作品の内容には、現代社会が抱えるある種の矛盾点な
ども描き出して、それなりに観られるものになっていた。特
にジャーナリズムに関わるエピソードなどは、映画の製作が
出版販売の会社であることを考えると、面白くも感じてしま
うところだ。
脚本は、昨年堤幸彦監督の『自虐の詩』などを手掛けた関え
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06月14日(土)
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