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On the Production
by 井口健二
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■デイ・オブ・ザ・デッド、レッドライン、カンフー・パンダ、12人の怒れる男、1000の言葉よりも、小さい赤い花、TOKYO!
に見えた。しかもそこには、目撃者やその他の証言などの証
拠も揃っている。そこで陪審員たちは、有罪に即決して審議
を終えようとするのだが、そのとき1人の陪審員が反対を表
明する。
それは単に、証拠調べもせずに結論を出してしまうのはどう
かというだけ考えだったが、全員一致の結論が必要な審議は
それで終了できなくなる。こうして開始された審議では、い
ろいろな意見が交錯して行く。
元々は1954年に“Studio One”という1時間枠のテレビ番組
で放送されたドラマがあり、そのオリジナルも手掛けたレジ
ナルド・ローズが97分の作品に仕上げたのが1957年の作品だ
った。因にローズは、1997年に放送された117分のテレビド
ラマ化も手掛けている。
その作品のロシア版となるが、今回の上映時間は160分。最
初の試写の案内では、153分のインターナショナル版の予定
だったが、日本公開は7分長いロシア国内版で行われること
になったようだ。
つまり最初のテレビドラマからはほぼ3倍に伸びている訳だ
が、そこに描かれているのはロシアの現状を克明に描いたも
のとなっている。特に、被告の少年がチェチェン出身者とさ
れているなど、ロシアが抱えるさまざまな問題が描かれてい
るものだ。
その内容は、ロシアの政府機関紙イズベスチャが、「観るも
のの心は痛み、情けないという感情さえ覚えさせ、涙までも
溢れてくる」と論評したものだが、日本人の観客としてそこ
までの気持ちは抱かないまでも、映画製作者の持つロシアの
現状に対する懸念のようなものは如実に感じられる思いがし
た。
恐らくそれは、ロシアの現状であると共に、その現状に無関
心な国民にも向けられているものと思われるが、その状況は
日本人にもあまり変わりはないのではないかとも思える。そ
してそれは、現代の世界中の国々に共通する問題のようにも
思えた。
なお本作は、今年のアメリカ・アカデミー賞外国語映画部門
にノミネートされた。
『1000の言葉よりも』“...More Than 1000 Words”
イスラエル人のフォトジャーナリスト、ジヴ・コーレンを追
ったドキュメンタリー作品。なおコーレンは、1995年に撮影
のイスラエルのバス爆破事件の写真が、2000年に選出された
「過去45年間に撮影された最も重要な写真200」の1枚に選
ばれている。
カメラマンに関するドキュメンタリーでは、昨年10月に『ア
ニー・リーボヴィッツ』を紹介しているが、それとはかなり
違うものだ。もちろん、彼が報道写真家というところもある
が、コーレンの写真は人間をより人間として撮影している感
じがした。
それは戦場という生死を賭けた世界で撮影しているためでも
あるのだろうが、コーレンの写真には、仮に被写体が非戦闘
員の子供であっても、そこには生きていることの証が写し取
られている感じがしたものだ。
結局、リーボヴィッツの写真はフィクションであり、コーレ
ンの写真はノンフィクションなのであって、その優劣は一概
には言えないが、優れたノンフィクションがフィクションに
勝ることは致し方ない面もあると言うことだろう。フィクシ
ョンにはフィクションの面白さがあることも確かだが。
実は、少し前に写真映画と称するスチルのみで構成された映
画作品の試写を観て、その時にはスチルはムーヴィより情報
量が少ないと感じていた。しかし本作では、優れたスチルは
ムーヴィに劣らない情報量を表現できることも確認できた。
特に、映画の中で撮影される何枚かの写真では、ムーヴィか
らシャッター音でスチルに切り替わる構成となっているが、
そのスチルに捉えられた感動の強さには、ムーヴィ以上のも
のが感じられた。
その他にも、戦闘の前と後に撮られた写真の比較映像なども
登場し、そこから受けるインパクトの大きさも、ムーヴィよ
りスチルの方が大きいものだった。そういうことがいろいろ
と判りやすく映像になっている作品でもある。
因に、監督のソロ・アヴィタルは元特撮のスペシャリストだ
そうで、本作にはその特徴もよく出ていたようだ。その監督
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05月31日(土)
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