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On the Production
by 井口健二
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■同窓会、天安門、落語娘、次郎長三国志、コレラの時代の愛、ホット・ファズ
辺一徳、近藤芳正、山中聡、笹野高史、温水洋一といった顔
ぶれで描いて行く。さらに北村一輝、佐藤浩市、高岡早紀、
木村佳乃など、最近の日本映画の顔も勢揃いといった感じの
作品だ。
今の時代に幕末時代劇というのが、どれほど勝算があるのか
は判らないが、最近の映画に欠けている粋な風情も楽しめる
作品で、そんな気分に浸れるのも嬉しかった。一方、殺陣の
シーンでは、かなり体力の要りそうな大立ち回りもあって、
それも楽しめた。
CGIを使った背景などには、日本映画の現状が出てしまう
ような部分もあったが、それを別にすれば、多分僕ら以上の
年代の人には、それなりにノスタルジーを感じさせるところ
も出てきそうな作品ではある。
しかしその年代の男性は、実は一番映画を観ない観客層でも
ある訳で、それをこの作品で打破できるかどうか、そのアピ
ールを存分に仕掛けることが宣伝担当者の腕の見せ所となり
そうだ。試写会での反応は悪くはなかったし、あとは自信を
持って仕掛けてもらいたい。
ただし、映画全体が粋に作られている中で、宇崎竜童が歌う
主題歌「旅姿三人男」には、ちょっと外された感じがした。
「茶っ切り節」があんこで入る構成も在来りだし、ここはも
っとロックで欲しかったところだが…出来なかったのかな。
これは残念だった。
因に、今回は第1作のリメイク、オリジナルは最大9部作に
もなっている作品で、評判作はその後半の方にもあったりも
する。できれば続編の映画化も期待したいところだ。
『コレラの時代の愛』“Love in the Time of Cholera”
ノーベル文学賞受賞作家ガブリエル・ガルシア=マルケスに
よる同名原作小説の映画化。
19世紀末から20世紀に掛けての時代。疫病コレラの蔓延と内
戦の勃発で混乱する南米コロムビアを舞台に、51年9カ月と
4日の歳月を一途に1人の女性を思い続けた男性と、その愛
に翻弄された女性の姿が描かれる。
物語の始まりは1879年。まだ少年の主人公は電報局の配達係
をしていたが、ある日、配達先で1人の娘に出会う。
その娘は無教養なラバ飼いの父親に育てられていたが、上昇
志向の父親は貧乏な主人公には目もくれず、それでもしつこ
い彼から娘を遠ざけるために、引っ越しまでしてしまう。し
かし主人公は彼女に手紙を送り続け、娘もその思いに答えて
くれるように観えた。
ところがその地域にコレラが蔓延し始め、その治療に訪れた
ヨーロッパ帰りの医者が彼女に目を留める。そして当然父親
のお眼鏡にも叶った医者は、彼女の心も掴んで結婚。2人は
ヨーロッパに新婚旅行に旅立ってしまう。
こうして失意の底に沈んだ主人公だったが、やがて叔父の仕
事の手伝いを始めたことから頭角を現し、徐々に金持ちにな
って行く。それでも初恋の娘を思う心は変わらず、一途に彼
女が自分の許に帰ってくる日を待ち続けたが…
この主人公を、今年のオスカー助演男優賞に輝いたハヴィエ
ル・バルデムが演じて、娘からは「影のような人」と呼ばれ
てしまう、ちょっとオタクな青年から老年になるまでを見事
に演じ切っている。
書き出すとかなり壮絶なラヴストーリーという感じだが、物
語はガルシア=マルケスらしい捻ったユーモアにも満ちたも
ので、結構笑いながら面白く観ることのできる作品。その辺
のバランスを、監督のマイク・ニューウェルと主演のバルデ
ムが見事に取っている。
特にニューウェルは、『炎のゴブレット』の次の作品という
ことで、何となく伸び伸びと撮っているような感じもした。
その余裕のようなものも、この映画の雰囲気にはピッタリと
合っているものだ。
コロムビアでの現地ロケを敢行した町並や雄大な自然の風景
と、ガルシア=マルケス本人にも面会して、その意見も取り
入れたというバルデムの演技の両方が楽しめる。そんなお得
な作品とも言えそうだ。
『ホット・ファズ』“Hot Fuzz”
ゾンビ・コメディ映画の『ショーン・オブ・ザ・デッド』を
手掛けたエドガー・ライト&サイモン・ペッグの脚本から、
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05月25日(日)
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