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On the Production
by 井口健二
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■今日という日が最後なら、カスピアン王子、イントゥ・ザ・ワイルド、落下の王国、スピード・レーサー、8½、帰らない日々、BUG
などの企画に関わっていたはずだが、今のところ実現したの
は本作だけとなっている。
その本作は、ターセムが自費を投じて製作、脚本、監督した
作品とのことで、正しく個人映画となっている。しかもその
映像は、世界遺産13カ所を含む世界24カ国以上を巡って撮影
が行われたもので、思う存分、お金と時間を掛けて作られた
作品のようだ。
これはスタジオ絡みでは到底無理な話で、個人映画でないと
実現できないものだろう。
その物語は、1915年のハリウッドで始まる。主人公は映画の
スタント俳優だったが、鉄橋からの落下シーンの撮影で両足
骨折の重傷を負い、再起はおろか、再び歩けることも覚束な
くなる。しかも他にもいろいろあって、自殺願望に取り憑か
れている。
しかしそこに、ルーマニアからの移民の子で、オレンジ農園
での収穫作業中に樹から落下して腕を骨折したという幼女が
現れる。そして、その子にせがまれるまま主人公は空想のお
話を始めるが…
そのお話は中東らしい異国が舞台。そこで横暴な領主に反抗
するいろいろな人種・職業の6人の男たちの冒険物語が始ま
る。その中には、幼女の父親やチャールズ・ダーウィンもい
るようだ。
この冒険物語の背景が、プレス資料によれば、ナミビアから
フィジー、インド、バリ、イタリア、ドイツ、さらに、ブエ
ノスアイレス、プラハ、イスタンブール、ペルー、アンコー
ルワット、エジプトのピラミッド、万里の長城など、世界中
で撮影されているものだ。
因に他の資料では、ネパールやルーマニアなどでも撮影され
ているようだ。しかもこれらの風景が、恐らくターセム自身
が美しいと感じたそのままに描かれているもので、まさに世
界中の美しい風景がこの1本の映画の中に納められている。
さらに、1915年のカリフォルニアのシーンは、サイレント映
画の撮影風景やオレンジ果樹園も含めて、南アフリカで撮影
されたそうだ。なおエンディングクレジットでは、これら撮
影に関わった人たちの名前が延々と出てくるのも凄かった。
こんな風景映画のような作品だが、その中での物語は、あま
り大げさにならないように、子供の登場人物を配することで
うまく計算されて作られている。その構成も巧みに感じられ
た作品だった。
なお、映画の最後にはサイレント映画で活躍した先人たちへ
のオマージュとも思える映像が登場して、それも楽しませて
くれるものになっている。

『スピード・レーサー』“Speed Racer”
1967年−68年に放送された和製アニメ作品『マッハGoGoGo』
を、『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟の脚本、監督
で実写映画化した作品。アニメの奇想天外なカーレースが、
豪華絢爛のCG映像の中で再現される。
物語は、一家でスピードレースに賭けているレーサー一家の
次男を主人公に、レースを牛耳る巨大企業の圧力や妨害に屈
することなく、自らの目標に向かって突き進んで行く彼らの
姿が描かれる。
これに、レースの不正を調べている機関の調査員やライヴァ
ルのレーサーなどが絡んで、サーキットレースやラリーレー
スでの激しい闘いが展開される。さらにそこには忍者アクシ
ョンなども登場するという代物だ。
オリジナルのアニメシリーズは、実は当時の製作者たちに運
転経験が無く、運転の常識も知らないままに作り出したとい
う説もあるもので、お陰で常識外れの映像が次々に展開され
て、それが受けたということになっている。
本作はそれをウォシャウスキー兄弟が、そのオリジナルのイ
メージのままに実写(CG)映像化したもので、その意味で
はオリジナルの無邪気さみたいなものが見事に映画の中に再
現されているものだ。
従って観客も、その無邪気さの中に浸り込んで観るべきもの
で、そこに小賢しい文句などを付ける必要はない。ただ単純
に物語を楽しめばいいと言える作品だ。
しかもその作品に、主演のエミール(イントゥ・ザ・ワイル
ド)ハーシュを始め、スーザン・サランドン、ジョン・グッ
ドマン、クリスティーナ・リッチ、マシュー・フォックスら

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05月18日(日)
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