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On the Production
by 井口健二
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■近距離恋愛、ビルと動物園、カンフー・ダンク、マーキュリーマン、シティ・オブ・メン、ラストゲーム
作品だ。
しかもこの格闘技を演じるのが、主には女性というのも見所
の作品で、テロリストの右腕役と「月の護符」の守護者役の
女優2人が見事な格闘技を見せてくれる。タイ女優のアクシ
ョンの良さは他の作品でも確認済みだが、この作品でもそれ
は堪能できる。
もちろんその格闘技は、リットグライの手で演出されたもの
ではあるが、かなりハードに見事に演じられている。実は、
主演男優と女優の1人は本業がモデルとのことで、体型を維
持するための鍛練がアクション演技に活用されているのだそ
うだ。
もう1人の女優は元々がテコンドーの名手ということだが、
こちらもモデル顔負けの風貌でいずれもスター性のある俳優
たちと言えるものだった。
その他は、タイ映画には定番のオカマキャラも登場するが、
こちらは元ムエタイ選手で、競技で得た賞金で手術を受けた
と言う本物。その半生は、2005年に日本でも公開された映画
『ビューティフルボーイ』の元になっている人だそうだ。
この作品も、人間ドラマにはちょっと物足りなさもあるが、
アクションは本物が楽しめる作品となっている。

『シティ・オブ・メン』“Cidade dos Homens”
リオデジャネイロのスラム街=ファヴェーラを舞台に、幼く
して銃を持ち、危険なギャングとしての生活を送る子供たち
の描いた2002年フェルナンド・メイレレス監督作品『シティ
・オブ・ゴッド』の兄弟編とも呼べる2007年の作品。
オリジナルは、2002年の東京国際映画祭で上映され、翌年に
日本公開もされている。ただし本作に関しては、2002年から
05年にブラジルで同名のテレビシリーズが製作されており、
その続きという性格が強いものだ。
その本編の舞台は、Dead End Hillと呼ばれるリオデジャネ
イロの丘陵地区のスラム街。主人公のアセロラとラランジー
ニャは、そこで兄弟のように育ってきた。この2人を『…ゴ
ッド』にも出ていた当時の子役が演じているが、役名は異な
っている。
この他にも共通して出演している俳優は複数いるが、いずれ
も役名は異なっている。因に『…ゴッド』は、リオの西部に
ある平地のスラム街を舞台にしていたもので、本作とは舞台
も異なっているものだ。
ということで、『…ゴッド』との関連性はちょっと希薄なも
のだが、そこで展開される物語は、『…ゴッド』と同様の貧
困とギャングたちに囲まれて、毎日がサヴァイヴァルという
極限の生活。そんな物語が今回も展開される。
ただし前作では、スラム街で行われている麻薬取り引きを背
景に、それに伴うギャング団の抗争がヴァイオレンスたっぷ
りに描かれた。それに対して本作では、麻薬の存在はかなり
希釈されて、縄張り争いが抗争の原因とされている。
これはテレビシリーズとの兼ね合いもあるのだろうが、これ
により抗争している若者たちの間には、特に込み入った話も
なく、すっきりとした物語になっている。とは言え銃撃戦な
どは迫力満点に仕上げられているものだ。
そんな全体の物語の中で、主人公のアセロラには18歳にして
2歳の息子がおり、一方のラランジーニャは生き別れた父親
を探している。そして物語の中で2人は、それぞれが未来に
向かっての岐路に立たされて行くことになる。
『…ゴッド』はかなりネガティヴな面も強く、それはそれで
見事な作品だったが、本作はそれよりも未来に向かうポジテ
ィヴな面も描かれて、全体的な印象は好ましい感じの作品に
なっている。
とは言え、描かれる彼らの生活は強烈で、その描写の多くは
実話に基づいているということでは、『…ゴッド』と同様か
なり衝撃的な作品ではある。
日本とはかなりかけ離れた社会の物語ではあるが、世界には
まだこんなこともあるのだということを教えてくれる作品。
しかしそこで繰り広げられる友情の物語は、どんな世界にも
不変のものだ。

『ラストゲーム/最後の早慶戦』
1943年10月21日、雨の降り頻る明治神宮外苑競技場で行われ
た学徒出陣式(出陣学徒壮行会)。それは、それまで大学生

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05月11日(日)
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