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On the Production
by 井口健二
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■ランボー最後の戦場、グーグーだって猫である、アクロス・ザ・ユニバース、スカイ・クロラ
では2004年の『イノセンス』以来となる新作。森博嗣原作の
小説シリーズからの映画化で、我々の住む地球と似ているが
ちょっと違う星の物語。
青空に白い雲の浮かぶ中を単座の戦闘機に乗った若者が、新
たに配属された航空基地へと降り立つ。その基地では彼が乗
ってきた戦闘機は回収され、新しい(?)機体が用意されて
いる。
その基地には3人の先任パイロットがいる。また、若い女性
の基地司令も以前は戦闘機に乗っていたらしい。そして彼は
敵戦闘機との戦いの任務につく。そんな戦いの合間には、戦
友と酒を酌み交わし、娼館で女を抱く、普通の戦時の生活が
繰り広げられるが…
やがて物語が進む内に、彼らがキルドレと呼ばれ、思春期の
まま年をとらない存在であることが明らかにされる。そして
彼らが死を迎えるのは、戦闘中の戦死だけであることも。
原作は、すでに5冊が刊行されているほどの人気シリーズで
あるらしい。このような代理戦争ものはSFでは珍しくはな
いし、本作のどこが(何が)評判になっているのかも、僕に
は判っていない。
ただ、プレス資料によると、押井監督はこの原作に、サリン
ジャーの小説のような若者の生き様を感じたとされている。
そして監督は、2005年『春の雪』を手掛けた当時23歳の新鋭
伊藤ちひろを脚本家に招請し、若者の視点で脚色することを
求めたようだ。
従ってこの作品は、SFの視点では語られていない。ここに
あるのは、一種異様なシチュエーションの中で生きる若者た
ちの姿だ。
ただし、そこで彼らが直面するのは、どうにも越えられない
壁に対抗する空しさであったり、そこから生じる厭世感であ
ったり…。それらは現代の若者にも通底するものでもあるの
かもしれない。そんなところが、この原作の魅力なのかなと
も思わせた。
SF的なシチュエーションの作品ではあるし、そのシチュエ
ーションはそれなりに面白いものではある。しかしそのSF
的なシチュエーションは映画の中では明確にされない。この
ため、この映画をSFで評価するのはかなり難しそうだ。
でもまあ、しち面倒臭いSFなどは元々制作者の眼中にない
のだろうし、それはそれで一般的な青春映画として観れば、
それでも良いのではないか…と思わせる作品にはなっている
ものだ
なお声優は、菊池凛子、加瀬亮、栗山千明、谷原章介らが担
当している。
05月04日(日)
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