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On the Production
by 井口健二
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■春よこい、カスピアン王子(特)、ラスベガスをぶっつぶせ、闇の子供たち、長い長い殺人、リボルバー、ブルー・ブルー・ブルー
うのだ。これでは当然ドナーの子は死ぬことになる。それで
も日本人の両親は移植手術を希望するのか。
この主人公に、タイで子供の人権擁護を行うNGOに参加し
ている日本人女性や、フリーの日本人カメラマンなどが加わ
って、人の心の闇に潜む物語が繰り広げられて行く。
こんな難しい題材を映画化したのは、阪本順治監督。僕が観
ているのは、1996年の『ビリケン』と昨年の『魂萌え!』だ
けだが、その2本とは全く違う、途轍もなく社会的な作品が
作り出された。
出演は、江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡。それにタイのブ
ランドン・スワバーン、プライマー・ラッチャタ。さらに佐
藤浩市、豊原功補、鈴木砂羽らが共演している。
幼児ポルノが日本でも社会問題になり、法律で取り締まる動
きが出ているが、現実はそんなに甘いものではない。この社
会の根底に巣くう事実こそ、日本人はもっと知らなくてはい
けないことだろう。
本作では主演の3人に誘われて観に来る人も多いかも知れな
い。そして現実を突きつけられる。それも良いと思われる。
今年一番の問題作に出会えたと感じた作品だ。
『長い長い殺人』
宮部みゆき原作ミステリー小説の映画化。
登場人物の財布を語り部にして、連続殺人事件が語られて行
くという、ユニークな構成の物語。それは刑事の財布であっ
たり、探偵の財布であったり、被害者、目撃者、犯人の財布
であったりもする。
しかも、物語の展開には一見関係ないようで、実際に事件の
解決にも直接的な関係のない登場人物が、読者(観客)には
重要な意味を持っていたりもする。その辺の描き方は、宮部
作品の面白さがそのまま映画に出ていると言えるだろう。
実は原作を読んでいないので、ここでその比較をすることは
できないが、以前に読んだ宮部作品のイメージからは、それ
がそのまま伝わってくるような作品。その意味では、多分原
作の読者も満足できるのではないかと思わせる映画化になっ
ているものだ。
物語は、1人の男性の殺人事件から始まる。その男性には多
額の生命保険が掛けられ、被害者の妻の態度にも不審なとこ
ろがある。しかしその妻には明白なアリバイがあった。
やがて第2の殺人事件が起きる。それは一見関係なさそうな
事件だったが、その被害者にも多額の保険金が掛けられてい
た。そしてそれらの事件が、遠大な計画に基づく連続殺人で
あったことが解き明かされて行く。
基本的には殺人事件に絡むアリバイ崩しがテーマとなるが、
最初は単純な交換殺人と思われていたものが、さらに複雑な
背景を持ち、しかも犯人と目された人物たちがマスコミを利
用する劇場形の事件へと発展して行く。
元祖劇場形とも言われたロサンゼルスの三浦事件は新たな展
開を見せているところだが、本編ではさらに複雑な物語が展
開される。そしてその物語では、心理学的な真犯人へのアプ
ローチなど、事件のいろいろな側面が多彩な登場人物によっ
て描かれて行くものだ。
そんな物語が、長塚京三扮する刑事と仲村トオル扮する探偵
を中心に、40人を越える主要なキャストによって描かれる。
そのキャスティングは、谷原章介、平山あや、大森南朋、酒
井美紀、窪塚俊介から、伊藤裕子、西田尚美、佐藤藍子、小
清水一揮、さらに長谷川初範、小野寺昭、森次晃嗣まで、恐
らくオールスターと言ってもいくらいのものだろう。
そんな華やかな雰囲気の中で、劇場形の連続殺人事件が展開
されて行くもので、これは原作者も読者も満足の行く映画化
と言えそうだ。
ただし、映画としてどうかというと多少疑問も生じるところ
で、特に上映時間の135分というのは、このテーマではちょ
っと長すぎる感じがする。もちろん、原作を忠実に映画化し
たらこれは仕方のないことではあるのだが、劇場興行でこの
長さは上映回数も減るし、いろいろ問題になるものだ。
実は本作の製作はwowowで、テレビ放映でならこの上映時間
も問題はないと思われるが、映画館での興行を考えるなら、
上映時間は2時間以内の方が良い。その時間の中で物語を描
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03月30日(日)
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