ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460302hit]

■P2、パーク・アンド…、西の魔女が…、ノー・カントリー、幻影師…、悲しみの乾くまで、センター・オブ・ジ・アース(特)、88ミニッツ
し、これが彼らの持味でそれが評価されているのだから、こ
れは仕方ないとも言えるものだ。
それにしても血しぶき一杯の作品だが、元々コーエン兄弟と
言えば、サム・ライミと共にスプラッター映画を作っていた
時期もあった訳で、その延長線上の作品と考えれば、これも
納得できるところではある。
そう考えれば、この作品は『13日の金曜日』を芸術的に描い
たとも言えるものだし、スプラッター映画もこうやって撮れ
ばアカデミー賞が貰える(しかも3個同時に)ということに
もなる訳で、これはある意味コーエン兄弟がハリウッドに勝
利したとも言えるのかも知れない。
それにしても、バルデムが演じた殺し屋は、史上最恐とも評
価されているようだが、その髪がおかっぱ頭というのも意表
を衝くところで、全体は「ふかわりょう」を思わせる風貌の
男が、有無を言わせず相手を殺すというのもすごい発想と言
えるものだ。
因にこの作品は、『すべての美しい馬』などのコーマック・
マッカーシーの原作によるものだが、原作の殺し屋にはこの
ような風貌の描写はないのだそうで、それをこのように演出
したというところにもコーエン兄弟の非凡さがあると言える
のだろう。
バルデム以外の出演者は、原題の意味を体現しているような
トミー・リー・ジョーンズ。他にジョッシュ・ブローリン、
ウッディ・ハレルソンなど。
なおマッカーシーの原作では、2007年ピューリッツァー賞を
受賞した“The Road”が製作中とされているが、核戦争後の
世界を描くと言われるその作品も楽しみになってきた。

『幻影師アイゼンハイム』“The Illusionist”
ピューリッツァー賞受賞作家のスティーヴン・ミルハウザー
原作による短編小説の映画化。
19世紀末のウィーンを舞台に、オーストリー=ハンガリーの
二重国家となって崩壊寸前のハプスブルグ帝国皇帝の座を巡
り、ハンガリー王家の娘との政略結婚による再統一を企む皇
太子と、その前に現れた1人の幻影師の物語が描かれる。
その幻影師アイゼンハイムは、見事なマジックでウィーンの
人々を魅了していた。ところがある日のこと、劇場に現れた
皇太子の婚約者が幼い頃に手品を見せていた幼馴染みの女性
だったことを知る。その昔の彼は、身分の違いから彼女の許
を去ったのだった。
その少年が、幻影師となって彼女の前に戻ってきた。やがて
その人気から王宮に招かれて技を披露することになったアイ
ゼンハイムは、その見事過ぎる技によって皇太子の不興を買
うことにもなってしまう。
そして幻影師と婚約者の仲も疑う皇太子は、腹心の警部に幻
影師を陥れることを命じる。しかしそれは婚約者の信頼を失
わせることになり、それが引き金となって皇太子はある事件
を起こしてしまう。
その事件の後、アイゼンハイムは皇太子への報復を企むこと
になるが…
この物語が、幻影師にエドワード・ノートン、皇太子にルー
ファス・シーウェル、警部にポール・ジアマッティ、そして
婚約者にジェシカ・ビールの配役で描かれる。
脚本・監督のニール・バーガーは本作が2作目という新鋭だ
が、2002年のデビュー作では映画祭での受賞などもしている
ようだ。そして本作では、短編小説の原作から、当時の歴史
的な背景なども取り入れて見事な脚本を作り上げている。
因に、原作には婚約者の女性は登場しないのだそうだが、映
画はその女性の存在が素晴らしいドラマの根幹となっている
もので、その脚色は見事なものだ。また、観客によって如何
様にも取れる結末が、最高の情感を生み出している。
アメリカでは『プレステージ』と同時期に公開されて魔術師
物の競作となったが、大手スタジオが4000万ドルの製作費を
掛けた作品に対して、1650万ドルのインディペンデント作品
の本作は一歩も退くことなく、51館の封切りから最後は全米
1432館の拡大公開を達成、ほぼ同等の興行成績を記録した。
また本作は、スティーヴン・キングが、「何度でも観たくな
る!」と絶賛し、2006年度のTop 10に推薦したとのことだ。


[5]続きを読む

03月09日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る