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On the Production
by 井口健二
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■Girl's BOX、山桜、Swedish Love Story、船山にのぼる、花影、妻の愛人に会う、マンデラの名もなき看守、噂のアゲメンに恋をした!
ところが、最初は建設省などの肝入りで始まった計画は途中
で消滅。しかしこの計画を始めた人たちは、独自に寄付を募
るなどしながら事業を継続して行くことになる。その経緯も
明確には語られないが、相当の努力が払われたことが想像さ
れるものだ。
でも、映画はそんな生々しいことは抜きにして、その計画の
ために頑張る人々を描いて行く。その目的は、ダム湖に沈む
12万本の木々の思い出を残すこと。そこで湖に沈む木を山か
ら切り出して船を作り、その船を常時の湖面より高い場所に
置くことが提案される。
つまり、ダムが完成すると、一度は試験湛水と呼ばれる常時
の湖面より高く極限状態にまで水を貯めるテストが行われる
ことがあり、その時に湖面に浮かべた船を所定の場所に移動
させて、水位が下がるとその高い場所に船が残るという計画
だ。
しかし、計画は容易に賛同が得られるものではない。そのた
め、計画をアピールするためにいろいろなイヴェントを行う
などの行動が開始され、それによって人々が団結して行く姿
も描かれる。
「船頭多くして船、山に登る」とは、本来は良い意味では使
われない諺だと思うが、ここではまさに多くの船頭によって
イヴェントが成し遂げられて行く。そんな素敵な物語が展開
されるものだ。
なお映画では、船づくりに並行して村の樹齢600年とも言わ
れる古木を移植する話も描かれる。その運搬も大変だったも
のだが、残念なことに映画ではその古木のその後が描かれて
いなかった。その辺がちょっと気にはなったが、その結果は
まだ出ていないのかな。
『花影』
1988年に大林宣彦監督の『異人たちとの夏』などを手掛けた
市川森一原作・脚本による日韓の男女を巡るちょっとファン
タスティックな要素もある物語。
主人公は在日3世の女性・五木尚美。宝飾デザイナーとして
人気のある彼女は、韓国の釜山に店を出す準備をしていた。
そして現地に交渉にやってきた彼女は、その足で祖先の墓参
りに行くが、そこで教え子と共に訪れていた美術教師の韓国
青年と出会う。
彼女は、デザイナーとして成功していたが、私生活では写真
家の男性と不倫関係にあり、やがてそれはスキャンダルとな
って仕事の足を引っ張り始める。そして人目を避ける彼女の
許に、彼女を「サンミ」と呼ぶ韓国青年からの手紙が届く。
ラヴストーリーではあるが、主人公の女性が結構我儘で、そ
んな我儘なヒロインを山本未來が良い雰囲気で演じていた。
一方の韓国青年役は、『Mr.ソクラテス』『ひまわり』のキ
ム・レウォン。またまた好漢ぶりを発揮している。
さらに、その母親役を『チャングムの誓い』のパク・ジョン
スが演じる他、日本側では、石黒賢、戸田恵子、笹野高史ら
が共演する。
監督は、相米慎二や黒木和男の助監督を長年務めてきた河合
勇人のデビュー作品。
物語は、実はちょっとファンタスティックの側面を有してい
て、それは有り勝ちなものではあるけれど、無理なく作られ
ている。特に後半、ヒロインが突然ハングルを喋り始めるの
が良い感じでもあって、この辺にファンタシーの要素を持っ
てくるのは大賛成だ。
脚本家にその意識があるかどうかは別として、こんな風にフ
ァンタシーを利用してもらえると嬉しくなる。これがベテラ
ンのうまさということなのかな。『レッドオクトーバーを追
え』のショーン・コネリーのようなところもあるが、小手先
を労さず、自然に物語に溶け込ませるのはすばらしくも感じ
られた。
なお、映画には釜山の桜が登場するが、これは戦前日本国に
よって植えられた染井吉野だそうで、当然戦後にほとんどが
伐採されたが、一部の韓国の人々の努力で残されたものだそ
うだ。そんな日韓の交流も心に留めたい作品だった。
『妻の愛人に会う』“아내의 애인을 만나다”
題名の通り、妻に不倫された夫が、その妻の愛人に会いに行
く話。
以前に東京国際映画祭で上映された東南アジアの映画で、妻
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02月24日(日)
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