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On the Production
by 井口健二
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■バンテージ・ポイント、カフェ代官山、愛おしき隣人、告発のとき、ラフマニノフ、ねこのひげ、恋の罠、チェスト!
大手のスタジオからは敬遠されたようだ。しかし、クリント
・イーストウッドが支援を表明し、それによってようやく実
現に漕ぎ着けたとされる。
物語の主人公は、元military policeの退役軍人。その主人
公の許に、イラクの戦場から帰国した彼の息子が一時休暇で
町に出たまま基地に戻ってこないとの連絡が届く。息子の帰
国も知らされていなかった主人公は、不安に駆られその基地
のある町に向かう。
ところが基地での説明は要領を得ず、主人公は地元の警察に
も照会を求める。もちろん地元警察が軍の事件に関ることが
できないのは承知の上だ。そして無惨に焼かれた若者の遺体
が発見され、その犯行現場を巡って軍の警察隊と地元警察の
綱引きが始まる。
そんな中で、主人公は昔とった捜査の勘を発揮して、地元警
察の女性刑事に協力していくことになるが…それはやがて、
恐ろしい現実を彼に突きつけることになる。
現場を見ただけで状況を正確に把握する昔ながらの捜査官で
ある主人公の姿や、その一方で息子の携帯電話に残されてい
た画像データが徐々に復元されていく様子など、新旧の要素
が巧みに組み合わされて真実が明らかにされて行く。
『クラッシュ』は、複数の登場人物によるアンサンブルドラ
マだったが、今回はトミー・リー・ジョーンズの演じる退役
軍人が話の中心。そしてその物語に、シャーリズ・セロン扮
する女性刑事が絶妙に入ってくるもので、その展開のうまさ
にも唸らされた。
ジョーンズ、セロンの他に、スーザン・サランドンが共演。
また、ジェームズ・フランコ、ジェイソン・パトリック、ジ
ョシュ・ブローリンらも登場する。
アメリカ軍が進駐する中東イラクで今何が起きているのか、
エピローグで挙げられる星条旗の意味が深く心に突き刺さる
作品だった。
『ラフマニノフ〜ある愛の調べ〜』“Lilacs”
巻頭でライラックの咲き乱れる小路が描写され、ロシア革命
でアメリカに亡命した天才ピアニストにして作曲家=セルゲ
イ・ラフマニノフの苦悩を描くロシア映画。
1917年にアメリカに亡命したラフマニノフは、ピアノ制作者
のスタンウェイの支援のもと全米を巡る演奏ツアーを行って
大成功を納める。しかし、それによって作曲の時間を奪われ
たラフマニノフは、故国ロシアへの望郷の念と共に精神を乱
して行くことになる。
そんなとき、彼の許に匿名の贈り主からのライラックの花束
が届けられる。それは彼が子供の頃を過ごした家にも咲いて
いたものであり、彼を巡る3人の女性たちとの思い出にも繋
がるものだった。
ラフマニノフの子供時代は、父親が事業に失敗して破産、両
親の離婚など不遇なものだったようだ。しかし彼はピアノの
才能を認められ、音楽で生活していけるようになる。ところ
がそんな彼に1人の年上の女性が近づき、彼の人生は狂わさ
れる。
その年上の女性とはやがて別れるが、次に近づいてきたのは
マルクス主義を信奉する革命闘士の女性。だが、革命を認め
ないラフマニノフは彼女を認めることもできない。そんな彼
を、幼い頃から見詰める女性は別にいたのだが…
正に激動の時代を生きた天才の苦悩を描いた物語。特に始め
に描かれるカーネギーホールでの演奏会のエピソードは、こ
れから描かれる波乱の物語を予感させる。このつかみはうま
くできている感じがした。
その後もアメリカ各地での演奏会の様子は、移動シーンに当
時の鉄道やその他の記録映像を挟むなどして興味を引くよう
に描かれている。また演奏会そのもののシーンもそれなりに
丁寧に再現されていたようだ。
そして物語は、脚色された部分もあるが、大凡のエピソード
は事実に則したものとされており、それはドラマティックな
物語が展開するものだ。
ただ、アメリカのシーンでも台詞がすべてロシア語というの
は我慢するとしても、上映時間が97分と短いためか、劇中の
演奏のシーンがちょっと短いのは残念な気がした。他の作品
でもいろいろ聞かれるラフマニノフ作品とのことだが、失敗
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02月10日(日)
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