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On the Production
by 井口健二
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■プライスレス、スルース、ジェシー・ジェームズ…、いつか眠りにつく前に、つぐない、ぼくたちと駐在さんの700日戦争、フランチェスコ
この老境の女性をヴァネッサ・レッドグレイヴが演じ、その
若き日の姿にクレア・デインズが扮する。
また、デインズの親友役をメリル・ストリープの実の娘のメ
イミー・ガマーが演じ、その後日の姿をストリープが演じて
いる。さらに主人公の娘役で、レッドグレイヴの実の娘のナ
ターシャ・リチャードソンが出演するなど、親子が2組も共
演している作品。
原作は、1996年公開の『魅せられて』などのスーザン・マイ
ノット。本作では、2002年の『めぐりあう時間たち』の原作
者のマイクル・カニンガムと共に脚色を手掛け、さらに製作
総指揮も担当している。
そして監督は、ジョゼッペ・トルナトーレ監督の『海の上の
ピアニスト』や『マレーナ』で撮影監督を務めたラホス・コ
ルタイ。すでに、ベルリン映画祭での上映作品の監督経験も
あるということだが、今回はスター女優が共演する本格的な
作品だ。
その監督が、試写会に来場してQ&Aも行われた。そこで、
デインズを主演に起用した理由を訊いてみた。実はコルタイ
監督は、1995年のジョディ・フォスター監督作品“Home for
the Holidays”の撮影監督として彼女を撮っており、その印
象からかと訊いてみたものだ。
それに対する監督の答えは、「その頃の彼女はまだ10代で、
彼女の方が忘れていたくらいだったが、実際、最近の彼女は
役に恵まれていないと感じていて、今回はロンドンで自分の
監督作品を見せて、出演を依頼した」とのことだ。
一方、プレス資料によると、脚本を担当したカニンガムが、
自原作の『めぐりあう…』に出ていたデインズを見ていて、
今回は彼女を想定して脚本を書いたとしている。
SF映画ファンにとってデインズの印象は『T3』で固まっ
ていると思うが、『もののけ姫』のアメリカ版で声優を務め
るなど、以前から気にもなっていた女優で、今回こんな風に
周囲に認められて、代表作と呼べるものができたことは嬉し
いところだ。
なお、デインズは今回クラブ歌手という設定の役柄で、劇中
歌も聴かせてくれる。彼女の歌声は1994年の「若草物語」で
も披露されているようだが、今回は歌手という設定の本格的
なもので、しかもしっかりと歌っていたのには驚いた。これ
は監督も嬉しい誤算だったようだ。
それから撮影が本業の監督は、映像に相当こだわりがあった
ようで、今回の撮影監督は別の人が担当しているが、特に巻
頭の海岸のシーンは、CGIを使わずに全部実写で撮ったも
のだと自慢げに語っていた。そして、確かにその映像は素晴
らしものだった。
『つぐない』“Atonement”
1人の少女のついた嘘が、愛し合う男女の仲を引き裂いて行
く…今年度のアメリカでの賞レースで、トップランナーにな
るかも知れないイギリス映画。
発端は1935年。そのとある1日に起きた事件は、少女の誤解
に基づく証言によって、彼女の姉の恋人でもあった若者を犯
罪者にしてしまう。そしてその若者は、刑務所か戦場かの選
択を迫られ、ヨーロッパ戦線へと出陣する。しかしそれはフ
ランスの敗色濃厚な時期のこと、ダンケルクに追いつめられ
たイギリス軍は多大な犠牲を払って帰国するが…
この少女の役を、第1部ではこれから出演作が目白押しにな
りそうな新人のシーアシャ・ローナンが演じ、聡明だが繊細
な少女の思いを見事に描いて行く。そしてこの役は、第2部
では10月に紹介した『エンジェル』でも作家の役を演じてい
たモローラ・ガライに引き継がれる。
一方、姉の役はキーラ・ナイトレイ。第1部では奔放な女性
の役を、また第2部では、恋人を犯罪者にされ、さらに戦場
に取られた苦悩に満ちた女性の役を見事に演じている。そし
て若者の役には、『ナルニア国物語』でタムナスさんを演じ
ていたジェームズ・マカヴォイが扮しているものだ。
基本的にはミステリーではないのだけれど、長年に渡る謎が
あるときに解き明かされる。その瞬間の重みは信じられない
くらいのものになっている。そんな見事な作劇に満ちた物語
だ。特に、同じ事象をそれぞれの視点から写して、思い込み
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12月30日(日)
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