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On the Production
by 井口健二
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■明日への遺言、Mr.ビーン、テラビシア、アメリカン・ギャングスター、勇者たちの戦場、そして春風にささやいて、トリコン、黒い土の少女
量販店に目を付け、生産者から直接仕入れる流通革命の話を
ルーカスにしていた。
時はヴェトナム戦争の最中。街にはアジアで良質なヘロイン
を味わってきた若者たちが溢れていた。しかしニューヨーク
に流れるヘロインは純粋からは程遠く、しかも警察が一度押
収した麻薬が還流しているものもあった。
そんな中、ルーカスは、ヴェトナムいる仲間に連絡を取り、
自らも現地に飛んで、純粋なヘロインを調達する。そして、
米軍の物資に紛れさせる方法で、本土への密輸ルートの形成
に成功する。
一方、ニュージャージーの刑事ロバーツは、押収した現金を
そのまま本部に届けるような実直な男。彼のやり方は、周囲
の汚職警官たちから煙たがられ、昇進もままならなかった。
そんな彼に、地方検事直属の麻薬捜査官チーフの仕事が与え
られる。そしてそれは、麻薬捜査に留まらず、警察組織全体
を揺るがす捜査へと発展する。
なお、物語は実話に基づいており、特にワシントンは、役を
演るに当ってルーカス本人にも面会して役作りをしたという
ことだ。
ヴェトナム戦争の状況や、最後はサイゴン陥落など、僕らも
知っている歴史的な出来事が背景に置かれ、第2次大戦ベビ
ーブーマー世代にはいろいろな面で興味深い作品となってい
る。その戦争を利用して甘い汁を吸った奴がいて、さらにそ
れを利用して警察組織の浄化に成功した男がいる。これも、
アメリカンドリームなのだろう。
共演は、キウェテル・イジョフォー、キューバ・グッディン
グJr.など。また、劇中のボクシング、ジョー・フレイジャ
ー対モハメド・アリ戦のシーンでは数多くのセレブのそっく
りさんも登場する。
なお、映画の最初の量販店のシーンで、店頭のテレビを指さ
してソニーの次に、トウシバとわざわざ言うシーンがあり、
さすが次世代ヴィデオの企画争いで、東芝HD-DVD陣営の旗手
ユニヴァーサル作品という感じで可笑しかった。
『勇者たちの戦場』“Home of the Brave”
アメリカ軍によるイラク占領を背景に、そこで人道的な活動
に従事していた軍医と、同じ出身地から従軍していた兵士た
ちの物語。
彼らは、本国帰還を間近にしたある日、要請でとある村に赴
き、そこで反米勢力の待ち伏せに逢う。そして、死傷者を出
しながらも何とか脱出し、本国への帰還を果たすのだが…そ
こで彼らを待ち受けていたのは、戦場以上に過酷な現実だっ
た。
その戦争が勝ち戦であったら、祖国は彼らを暖かく迎えたの
だろうか。サミュエル・L・ジャクスンが演じる主人公は、
戦地から戻ったその日に開かれたホームパーティでバーベキ
ューを焼いている。そして、食卓で交わされる会話には戦争
の話は出てこない。
それは、戦地での悲惨な体験を思い出させたくないという配
慮のようにも取れるが、実際に交わされている会話は極めて
他愛ないもので、そんな配慮でないことも如実にされる。そ
して、そんな周囲の対応が主人公を徐々に追いつめて行く。
一方、『ステルス』などのジェシカ・ビールが扮するのは、
体育教師だった女性。しかし戦闘で片手を手首から失い、職
場復帰はするがボール1個を扱うのもままならない。この女
性教師のシーンでは、義手はちょっと変な感じだったが、義
手を外したときのVFXは見事だった。
この他、同じ戦闘で親友を失った兵士の役でラッパーの50¢
としても知られるカーティス・ジャクスンが本名で出演して
いる。
原案、製作、監督は、1970年代に『いちご白書』などを製作
し、1990年以降、監督に転身してヘイデン・クリステンセン
が出演した『海辺の家』なども手掛けているアーウィン・ウ
ィンクラー。社会的な題材にも手腕を示す監督の渾身の作品
と言うところだ。
なお本作は、ブレット・ラトナー製作、キューバ・グディン
グJr.主演による『エンド・ゲーム/大統領最後の日』とい
う作品とセットで公開される。実は、スケジュールの都合で
そちらの方は観ることができなかったが、セット作は題名か
ら察すると政治の中枢での陰謀劇という感じのようだ。
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12月20日(木)
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