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On the Production
by 井口健二
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■シナモン+、東京少女、ちーちゃんは…、アドリブナイト、はじらい、4ヶ月3週と2日、ジプシー・キャラバン、アイ・アム・レジェンド
っている感じがする。
映画の中では、「家族が看取らないと死者があの世で迷って
しまう」というような台詞が出てきたと思ったが、日本では
それも叶わぬ独居老人が多いはずだ。その点、この映画に描
かれた韓国では、まだしっかりと家族関係が残されているよ
うだ。
その一方で、昏睡状態とはいえ、まだ息のある老人のそばで
大喧嘩が始まる様子などは、日本でもありそうだなと思って
しまうところだ。もちろん原作は日本の小説なのだから当然
だが、映画で違和感なく描かれているということは、韓国で
も同様なのだろう。
なお映画後半では、韓国の通夜の様子も描かれるが、焼肉を
食べながらの夜明かしというのは、日本の雰囲気とはかなり
違って面白かった。
主演は韓国テレビドラマの四季シリーズで『春のワルツ』に
主演したハン・ヒョンジュ。他に『春夏秋冬そして春』に出
演のキム・ヨンミンが、繁華街で彼女に声を掛ける娘の幼馴
染みの役を演じている。
監督は、その巧みな描写力などで第2のキム・ギドクと呼ば
れるイ・ユンギ。本作が第3作だが、いずれも若い女性の心
理を深く洞察したものだそうで、その流れの中での最新作と
いうことだ。
また本作では、監督自身が韓国語に翻訳された原作を見つけ
て映画化に漕ぎ着けたということだが、次回作にも平原作の
『素晴らしい一日』の映画化を予定しているそうだ。

『はじらい』“Les Anges Exterminateurs”
2002年に発表された『ひめごと』で、カイエ・デュ・シネマ
の年間ベスト1やフランス文化賞を受賞したジャン・クロー
ド=ブリソー監督は、2005年、その映画のオーディション中
にセクハラを受けたと主張する4人の女優に訴えられ、執行
猶予付きの有罪判決と多額の賠償金の支払いを命じられた。
本作は、監督の主張によると、その訴訟が起きる前に書き上
げられていた脚本の映画化だそうだが、あまりに現実に似た
展開は、監督の贖罪か皮肉、それとも言い訳かという感じに
も捉えられる。
物語は、次回作の準備を進める映画監督が主人公。その映画
で女性による究極の官能を描きたいとする監督は、オーディ
ションを受けに来た女優たちに、カメラの前で自慰をしてオ
ルガスムスに達するように要求する。
この要求に、ほとんどの女優は席を立ってしまうが、中には
応じる女優たちもいた。こうして集めた女優たちだったが、
やがて彼女たちの行動が怪しい雰囲気を帯び始める。そして
そこには警察の陰も見え始め…
ここから後は、ほとんど現実の通りとなってしまうが、取り
敢えず映画では、監督は女優に指1本触れようとせず、それ
は女優から求められても応じなかったと描かれている。
それが真実かどうかは判らないが、女優たちが監督に視線に
よる愛情を感じたとか、それを裏切られたから訴訟に及んだ
という主張はちょっと自己弁護に過ぎるような感じもし、訴
訟が不当だったと思わせようとする魂胆は見えるものだ。
従って僕には、監督の言い訳のようにしか取れなかったもの
だが、そのことを別にするとこの映画は、タブーへの挑戦と
して面白いとは感じさせるものだ。ただし本当にやったら、
やはり女優から訴えられることになってしまうだろう。
そんなある種の男の欲望みたいなものが描かれた作品とも言
える。なお作品は日本ではR−18指定を受けるもので、これ
は昔の成人映画だということだ。内容はともかく、その指定
は妥当の作品ではある。

『4ヶ月、3週と2日』
           “4 Luni, 3 Saptamani si 2 Zile”
今年のカンヌ国際映画祭で、最高賞のパルムドールに輝いた
ルーマニア映画。
チャウシェスク政権末期のルーマニアでは、労働力確保のた
めに女性には最低3人の出産が要求され、子供を4人生むま
では中絶も禁止、さらに14〜15歳の中学生女子にまで妊娠が
奨励されたという。当然避妊も禁止され、避妊具も店頭から
姿を消していた。
そんな1987年の大学の学生寮。その1室で、2人の女性が外

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12月10日(月)
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