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On the Production
by 井口健二
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■線路と娼婦とサッカーボール、歓喜の歌、ミスター・ロンリー、アディクトの優劣感、裸の夏、カンナさん大成功です!、SS
しても、多分原作者のアドヴァイスくらいはあったのだろう
し、それはその通りなのだろう。
実際、見た目の映像には、1960〜70年代のサイケデリック映
画を多少スマートにしたような…そんな印象も感じられた。
2Dの映像では結局、その辺が限界でもあるのだろうが、そ
の映像自体は、昔に比べれば間違いなく質感やリアルさなど
が向上しているものだ。
しかもその映像は、今回はほとんどがディジタルスチルカメ
ラで撮影されているが。その画素数は恐らく映画の最高水準
である4Kを超えて8Kぐらいの換算になるようだ。実は試
写会は1Kのプロジェクターで行われたものが、それでも画
像の美しさには感心した。
ただし、一部の動画部分が760pで撮影されていて、その部分
との画質の差が歴然としたのも驚きだった。恐らく全てを一
旦HDに変換して画質を調整すれば、動画部分ももう少しは
良くなるはずだが、それにしても静止画の威力は凄いものだ
と改めて実感した。
お話自体は、若者向けの他愛のないものだが、ドラッグを取
り立てて美化するものでもなく、それなりの罪悪感を持って
描いていたのには、見識も感じられた。一方、若者の本音の
ようなものもいろいろ語られていて、それも面白かった。
因に映画製作では、出演者をネット上で募集したり、撮影は
経費の安い台湾で行うなど、いろいろ新しい試みも行われた
ようだ。なお、映像では中国語の看板をCGIで日本語に書
き替えたということだが、これもスチル画像の特性を活かし
たと言えそうだ。
『裸の夏』
麿赤兒主宰の舞踏団・大駱駝艦が毎年夏に長野県白馬村で行
う合宿。そこには、毎年経歴や国籍も異なる30人前後の素人
の若者たちが参加し、大駱駝艦の艦員約20人と共に、基礎訓
練から麿赤兒による舞踏理論の受講、さらに舞踏の実践など
の学習が行われる。そして1週間後には、観客の前で舞踏を
披露するまでになる。
本作は、その合宿の模様を中心に、アーカイヴ映像なども挿
入されて、大駱駝艦そのものの歴史も紐解かれるようになっ
ている。そのアーカイヴ映像では、麿が師事した暗黒舞踏家
・土方巽による1968年の「肉体の反乱」や、1973年の大駱駝
艦「馬頭記」などの映像も見ることができる。
合宿の参加者は、学生からサラリーマン、主婦までといろい
ろだが、参加の動機も、単に「公演を見て面白いと思った」
から、それこそ定番の「自分を変えたい」まで種々。そんな
雑多な集団が朝のランニングに始まって、野口体操と呼ばれ
る全身の筋肉を余すところなく動かすための訓練などを続け
て行く。
また、夜間の麿赤兒による舞踏理論の講義では、麿の数々の
名言と共に、舞踏の本質に迫る理論展開も披露されている。
それにしても、中には舞踏未経験者で見るからに動きがぎこ
ちないと言うか、運動神経が疑われるような参加者もいて、
それが相方を担ぎ上げて振り回すという振り付けを学ぶのだ
が、それが短期の訓練で仕上げられて行くのは、感心すると
ころでもあった。
そして白馬山麓の野外で行われる最終公演は、『裸の夏』の
題名通り股間に小さな布を当てただけのほぼ全裸に金粉を塗
ったものとなるが、その衣装作りや、「予想はしていました
が…」と覚悟を決める様子なども描かれている。
その公演に舞台裏は、麿が用もないのに女性の楽屋を覗いて
は、「××見ちゃった」とはしゃぐシーンなどもあって微笑
ましくも描かれるが、徐々に緊張が高まる様子も丁寧に描か
れている。そして公演後の満足感、解放感なども心地良く伝
わってくる作品だった。
監督は『世界の車窓から』の企画・プロデューサーでもある
岡部憲治、撮影は『ワンダフルライフ』などの是枝作品を手
掛ける山崎裕、音楽は千野秀一。それぞれその道のベテラン
たちの作品でもある。
『カンナさん大成功です!』(韓国映画)
鈴木由美子の原作を韓国で映画化した作品。昨年の本国公開
では『猟奇的な彼女』などを上回る韓国ラヴコメ史上最高の
興行を達成、さらに韓国大鐘賞では『グエムル』を押さえて
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11月30日(金)
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