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On the Production
by 井口健二
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■再会の街で、鳳凰、黒い家、エンジェル、ザ・シンプソンズ、その名にちなんで、SAW4
た原稿に対して、社まで来てほしいとの連絡が届く。そして
出向いたエンジェルに対して、出版社は破格の待遇で出版す
ることを申し出る。
こうして出版された小説は大評判となり、その後も次々に出
版された本は、いずれもベストセラーとなって行く。そんな
彼女は、子供の頃から憧れだった屋敷を購入し、町に絵画を
寄贈したり、作品が舞台化されたり、一躍著名人となるが…
オゾン監督の作品では、『8人の女たち』にしても『スイミ
ング・プール』にしても、聡明な女性たちを主人公としてい
るが、本作も文筆に長けた若い女性を主人公にしている。そ
の女性が、周囲の無理解や恋に破れながらも、自分の決めた
道に邁進して行く物語だ。
そんな女性の姿は、現代にも通じるものだろうし、現代女性
の賛同も得られるものになりそうだ。まあその分、男の姿が
多少だらしなく描かれているのは、男の自分としては哀しい
部分でもあるが、それも仕方のないところだろう。
エンジェルを演じるモローラ・ガライは、2005年5月に紹介
した『ダンシング・ハバナ』でディエゴ・ルナの相手役を務
めていた若手女優で、今回は堂々としたヒロインを演じてい
る。また、オゾン作品には常連のシャーロット・ランプリン
グも出演している。
なお、往時のロンドンの風景や、イタリア、ギリシャ、エジ
プトなどを訪問するシーンには観るからに…という感じの合
成が使われているが、それが何ともクラシカルなのも作品の
雰囲気にマッチして良い感じのものだった。

<特別招待作品>
『ザ・シンプソンズ MOVIE』“The Simpsons Movie”
人気テレビアニメーションの初の映画版。お騒がせファミリ
ーが映画館のスクリーン狭しと大騒動を巻き起こす。
映画祭での上映では、日本人のミュージシャンによるゲスト
トークがあって、そこで映画版のテーマソングのアレンジが
テレビとはちょっと変えてあるという紹介があった。
それもそうなのだろうが、それとは別に僕が気付いたのは、
映画の最初で上映が始まったときには画面の左右に少し黒み
があったのが、本編になると画面が左右にちょっとだけ広が
るということだ。
この広がりは多分、初映画版と言うことで最初が1:1.78の
HDサイズから、本編は1:1.85のアメリカンヴィスタにな
ったものと思われるが、さすがシネマスコープを最初に手掛
けたフォックスの拘わりというか、誰がそんなことに気付く
のか…という代物だ。
そんな事細かな部分に始まって、いろいろな拘わりのある作
品。しかもかなりマニアックというのが、この作品の魅力だ
ろう。後は観客の趣味嗜好によって、それにどこまで気付く
かというところだ。
物語は、シンプソンズ一家の住む町の近くの湖の汚染が進ん
で危機的な状況になる。この事態にシュワルツェネッガーが
大統領を務める政府は町の隔離を断行。ところが、何故かシ
ンプソンズ一家だけは脱出に成功して…というもの。
これに、風刺やら何やらのギャグがふんだんにちりばめられ
て、特に風刺の部分は大人の観客にも充分に楽しめるものに
なっている。
ただ、物語は一見ハッピーエンドのように見えるが、実は根
本の問題は全く解決されていないもので、これを政府の横暴
に対する民衆の抵抗という形で決着させるのには、ちょっと
無理があるようにも思えた。まあ、その辺は観客の取りよう
でもあるが…
なお、シュワルツェネッガー大統領の声は本人ではなかった
ようだが、他に大物ハリウッドスターの本人が声優を務める
ゲストキャラクターも登場して、この辺はテレビシリーズの
魅力がそのまま踏襲されている。
それに物語や映像のスケールも、映画館のスクリーンでの効
果を充分に意識したもので、映画館で観るだけの価値はある
作品と感じられた。

<特別招待作品>
『その名にちなんで』“The Namesake”
『モンスーン・ウェディング』などのミーラー・ナーイル監
督による2006年作品。
ピュリツァー賞受賞作家ジュンバ・ラヒリの原作に基づき、

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10月31日(水)
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