ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460314hit]

■TAXiC、おやすみクマちゃん、酔いどれ詩人になる前に、北極のナヌー、エディット・ピアフ、ルーツ・タイム
族全員が載れるほどの大きさの氷山がなかったりという現実
が描かれる。
ただし、日本語版のナレーションをSMAPの稲垣吾郎が担
当していて、それ自体は問題はないのだが、何となくこの温
暖化の現実に対する発言が弱いように感じられた。確かに氷
の接岸が遅いとか、氷原が柔だとかということは言ってはい
るのだが、それが特に強調されていないように思えたのだ。
クレジットによると、オリジナルのナレーションはクィーン
・ラティファが担当したようで、口調は稲垣とはかなり違っ
たものになりそうだが、でもナレーションの原稿は翻訳のは
ずだから、そこで温暖化の問題が明確にされていないのなら
問題に感じる。
もっとも、温暖化問題では京都議定書にも署名を渋るアメリ
カの作品だから、それもあるかなと考えると心配になった。
それはともかく、映像では、愛らしい小熊の姿や、セイウチ
が一族で子育てをするという話、さらにはワモンアザラシ、
ホッキョクギツネ、ハシブトウミガラスなどの生態がいろい
ろと描かれていて、それは観ていて飽きることはない。
そこに温暖化の話は、確かに入れ難い話であったのかも知れ
ないが、その辺の主張の曖昧さが何となく気になる作品では
あった。

『エディット・ピアフ 愛の讃歌』“La vie en Rose”
邦題の「愛の讃歌」や、原題の「バラ色の人生」など、恐ら
くは誰でも1度は聞いたことのあるシャンソンの名曲を歌っ
た歌手エディット・ピアフの47年間の生涯を描いた作品。
ピアフは1915年にパリの貧民街で生まれた。母親は街頭で歌
って施しを受ける歌手だったが幼い娘を残して出奔。娘は兵
役中の父方の祖母が営む娼館に預けられる。そして大道芸人
だった父親が復員し、父親と共にどさ回りなどをする内に歌
で稼ぐようになる。
やがて20歳の時にパリのクラブ歌手となり、厳しいレッスン
と天性の圧倒的な声量によって見る見る頭角を現す。そして
ついには、パリ・オランピア劇場やニューヨーク・カーネギ
ーホールでの公演も成功させるが…
ピアフは1963年に亡くなったが、47歳という行年は当時にし
ても短いものだろう。しかしその末期の姿はとても47歳には
見えない。映画は時間を交錯させて描いているため、始めの
方から末期の姿が出てくるが、最初は何か別の意味があるの
かとさえ思ったほどだ。
その原因は、1日10本も打っていたというモルヒネのことが
映画の中でも説明されるが、薬物に対する意識が低かった時
代とはいえ、ここに至るまで周囲が何もしないでいたことも
信じられないくらいだ。しかしピアフは、その苦境の中でも
最後まで歌を忘れなかった。
そんなピアフの生涯を、さすが10歳以下のシーンは子役が演
じるが、20歳から老婆のようになってしまった47歳までを、
『プロヴァンスの贈りもの』などのマリオン・コティヤール
が見事に演じている。
コティヤールは1975年生まれだから今年で32歳、演じた期間
のちょうど真中という感じだが、本来なら簡単だったと思わ
れるこの年齢幅が、この作品ではちょっと異様な描き分けと
なっている。
その晩年の姿も力の入った名演だが、やはり年齢の近い最も
華やかだったころのピアフの姿は生き生きとして、成功と恋
を謳歌する姿が最高の華やかさで描かれる。そしてそれが暗
転して行く過程もまた見事に描かれた作品だ。
なおコティヤールは、元々がピアフの大ファンだったという
ことで、本作では、歌声はピアフ本人の音源が使われている
ものだが、彼女は息継ぎのタイミングから舌の回し方、喉の
動きまでを見事に合せており、その意気込みも伝わってくる
ものだ。
そしてその歌の内容が物語に見事に重ね合わされて、すばら
しい構成となっている。

『ルーツ・タイム』“Roots Time”
アルゼンチンで、少数民族の文化などを描く作品を作りなが
らTV番組やアニメ、クリップなどを製作している1978年生
まれの監督が、ジャマイカでレゲエの母体となるラスタファ
リアンの人たち描いたロードムーヴィ。

[5]続きを読む

07月20日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る