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On the Production
by 井口健二
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■リトル・チルドレン、ミス・ポター、レミーのおいしいレストラン、幸せの絆、フロストバイト、ウィッカーマン、遠くの空に消えた
人間、歳を食って来ると感動で涙を流すということも少なく
なってきて、この作品でも泣かされることはなかったが、い
たいけな少女と老人の交流を描いたこの作品は、冷静に観て
いても心暖まる素晴らしい作品だった。
物語は、幼い少女が夜道をさ迷い、倒れて動けなくなるとこ
ろから始まる。少女は翌日、近くの村に保護されるが、穀物
もろくに取れていないこの村では、1人少女を育てる余裕の
ある家もない。
ところが1人の老人が保護を申し出て、少女を背負って自宅
に連れて行く。その自宅は老人の1人息子の家と隣接したも
のだが、息子の嫁は子供に恵まれず、連れ帰られた少女に老
人の財産を奪われるのではないかと心配を募らせる。
こうしてその嫁は、尽く少女に辛く当るようになるのだが、
少女はそんな境遇にもめげずに素直に成長して行く。そして
その素直さは、やがて周囲の人々をも巻き込んで行く。
試写後に宣伝担当の人と話していて「『おしん』だね」とい
うことになった。実際、宣伝には当時の女優にもコメントを
もらったそうだが、本編の物語の背景は1980年代に設定され
ているといっても、その風景は日本のもっと古い時代を髣髴
とさせる。
その点では、ある種のノスタルジーも感じさせる作品とも言
えるが、それが今の観客にどう取られるかは興味の湧くとこ
ろだ。でもまあ映画には、いたいけな少女の一所懸命さが見
事に描かれていて、それだけで感動してくれればそれで充分
とも言える。
逆に世界には、今でもこんな境遇の子供たちがいるのだろう
し、そんなことにも思いを馳せてくれれば、それはそれでこ
の映画の価値とも言えるだろう。
監督は、内モンゴル出身のウーラン・ターナという女性で、
自ら脚本を書き映画化を目指すが最終的に200万元だった製
作費もなかなか調達できなかったそうだ。そして映画製作所
の資金援助は得られたものの、半分は自己資金で製作を敢行
したものということだ。
しかしその結果は、中国だけで2000万元を突破する興行収入
が達成され、さらに撮影当時8歳の主演のチャン・イェンに
は、中国映画史上最年少の主演賞も齎されたものだ。
『フロストバイト』“frostbiten”
2006年スウェーデン製のヴァンパイア・ホラームーヴィ。
スウェーデン映画というと、イングマール・ベルイマンの芸
術作品から、『長くつしたのピッピ』まで、いろいろなジャ
ンルの作品が日本でも公開されてきたが、ヴァンパイア・ホ
ラーというのは珍しいものだ。
でも、世界的なホラーブームの波は北欧にも押し寄せてきた
ようで、本作の他にも、幽霊ものと伝えられているデイヴィ
ッド・ゴイヤー監督の新作“Invisible”も、オリジナルは
スウェーデン映画からのリメイクとなっていた。
という前置きはこのくらいにして、本作は30日以上夜が連
続する極夜(と呼ぶようだ)の北欧の冬を背景に、太陽光が
弱点のヴァンパイアを描くという趣向。実はアメリカでも同
旨の作品が製作中だが、さすが本場では一足お先に作られて
いたようだ。
物語の発端は、1944年、第2次世界大戦の最中。北欧義勇軍
の兵士たちが敵に追われて逃げ込んだ家でヴァンパイアに遭
遇する。
そして、時代は現代、1人の女医が娘を連れて北極圏にほど
近い村に建つ総合病院へとやってくる。そこで女医は、遺伝
子医学の権威とされる教授に師事するつもりだったのだが…
その教授は、交通事故で昏睡状態の続く少女に赤色のカプセ
ルを飲ませていた。
そのカプセルを1人の研修医が盗み出し、試みに服用してし
まう。その効果はてきめんで、研修医は聴覚の鋭敏化や運動
能力の向上、さらに動物と話せるようになったり、顔も変え
られるようになるが…
一方、女医の娘は転校した高校の同級生からハウスパーティ
に誘われる。そのパーティでは新しいドラッグと称して赤色
カプセルが置かれており、やがてそれを飲んだ若者たちに異
変が起き始める。
カプセルでヴァンパイアが広まるというのは新機軸のようで
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06月30日(土)
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