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On the Production
by 井口健二
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■ジャンゴ(特)、オーシャンズ13、厨房で逢いましょう、クレージーストーン、傷だらけの男たち、Perfect Stranger、不死鳥の騎士団
今年の2月20日付で紹介した『モンゴリアン・ピンポン』の
ニイ・ハオ監督による2006年の作品で、中国本土と香港では
歴史的な大ヒットを記録したということだ。
舞台は四川省重慶市。破産寸前の工場でトイレの解体工事中
に高価な翡翠のペンダントが発見される。そのペンダントは
破産寸前の工場を救えるか…?
そのペンダントを展示して一稼ぎを企む工場長と、再開発の
ためにその土地を買収しようとしている業者の確執や、その
警備に雇われた元刑事、業者の依頼でペンダントを狙うプロ
の盗賊、噂を聞きつけた地元のこそ泥グループなどが入り乱
れて騒動が勃発する。
家が立て込んで人口も多そうな重慶市。『モンゴリアン…』
の素朴な風景からは一転して都会的な、と言ってもアメリカ
や日本とはまた違った風景の中での物語、話は実に中国らし
いし、異国情緒とは違うが何か異世界を見るような、そんな
感じで楽しめた。
『モンゴリアン…』の紹介の時にも触れたように、アンディ
・ラウが進めているアジアの若手監督を抜擢するファースト
・カットシリーズの1本として製作された作品で、最初から
世界視野で製作されているものと思われるが、判りやすい物
語と適度のアクションは、ハリウッド的な作品とも言えそう
だ。
ハリウッド映画のパロディのようなシーンも登場して、それ
がまたことごとくドジを踏んで行くという展開は、かなり自
嘲的な面も感じられるが、これからハリウッドへも雄飛しよ
うとしている監督には、一種の挑戦状という意味も込められ
ているかも知れない。
なお、コカコーラの缶が未だにプルトップでステイオンでな
いのが意外というか、最近の日本映画でも登場したプルトッ
プ缶が、こういうところで調達できると判ったことは面白か
った。それにしても、プルトップに印刷された懸賞は一体な
んだったのだろう?
なお本作は、7月21日から東京新宿のK's cimemaで開催され
る「中国映画の全貌2007」で上映される。
『傷だらけの男たち』“傷城”
『インファナル・アフェア』を手掛けた監督アンドリュー・
ラウとアラン・マック、脚本A・マックとフェリクス・チョ
ンのトリオが、『インファナル…』のトニー・レオン、『L
OVERS』の金城武の共演で描く警官たちの物語。
金城扮するボンは、ある事件の犯人を検挙した日、長年の恋
人に自殺を遂げられる。その傷心で刑事を辞めたボンは、私
立探偵をしながら酒浸りの生活を続けていた。
そんなある日、警察時代の上司だったレオン扮するヘイの婚
約者の屋敷で、彼女の父親と執仕が惨殺される。その事件は
ほどなく屋敷から金品を盗み出した男たちが互いに殺しあっ
て発見され、事件は解決したかに見られたが…
『インファナル…』に続いて、すでにハリウッドで、レオナ
ルド・ディカプリオ主演によるリメイクも決定しているとい
う作品。物語は、事件の真犯人も早い内に明かされるが、何
故、彼がそのような犯罪を犯したのかという点で、謎が謎を
呼ぶ展開となって行く。その複雑かつ巧みな構成は、『イン
ファナル…』と同様に観客の心を鷲掴みにするものだ。
特に本作では、主人公2人を取り巻く男女の関係が見事な緊
張感を持って描かれており、正しく「傷だらけの男たち」の
哀しみが見事に描かれていた。
共演は、『トランスポーター』などで国際的にも活躍してい
るスー・チーと、昨年1月に紹介した『ウォ・アイ・ニー』
に主演していたシュー・ジンレイ。シューは、現代中国4大
女優の一人とも呼ばれているそうだが、1997年の『スパイシ
ー・ラブスープ』での初々しい演技も忘れられない。他に、
『頭文字D』などのチャップマン・トウ。
ラウ監督は、5月にハリウッド進出作『消えた天使』を紹介
したばかりだが、『風雲・ストームライダーズ』や『頭文字
D』なども含めて見事にジャンルの違う作品を描き挙げる。
基本的には男性を描くのが得意と思われるが、本作でもその
資質は見事に発揮されているものだ。
『パーフェクト・ストレンジャー』“Perfect Stranger”
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06月20日(水)
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