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On the Production
by 井口健二
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■ヒロシマナガサキ、馬頭琴夜想曲、スピード・マスター、レッスン!、題名のない子守歌、私のちいさなピアニスト
挙げるなんて常識ではあり得ないし、やるならもっと別のこ
とだろうというところだ。もっとも、映画の成功より女優の
イメージが大切なら、これ以上のリアルさは無理なのかも知
れないが…これも工夫次第のものに思える。
他にも言いたいことはいくらでもあるが、言わずもがなの部
分もあるし、敢えて一番気になったポイントだけを書いた。
この意見が次回作のヒントになってくれることを願いたい。

『レッスン!』“Take the Lead”
『Shall We ダンス』にも登場した社交ダンスの聖地ブラッ
クプールで、4年連続優勝という輝かしい記録を持つ実在の
ダンサー、ピエール・デュレインの実話に基づく物語。
デュレインがニューヨークのスラム街の小学校で始めたダン
ス教室は、今では市内120校に拡大し、全米に広がりつつあ
るという。
映画はその活動を紹介したテレビドキュメンタリーにインス
パイアされたもので、実は、実際にデュレインが指導をした
のは小学校だが、映画化ではその舞台を高校に移すことで、
さらにドラマティックな物語に仕立てている。
デュレインは、ある日街角で若者たちが乗用車に危害を加え
ているのを目撃する。彼の姿を見て若者たちは逃走するが、
デュレインは、その車が近くの高校の校長の自家用車である
ことを知る。
翌日デュレインは高校を訪ね、昨日の出来事は伏せたまま、
生徒たちに社交ダンスを教えることを申し出る。彼には、社
交ダンスが若者たちの人生を正しい方向に導く指針になると
いう信念があったのだ。
しかし最初は、そんな考えが他の教師たちに通じるはずもな
く、それでも校長の判断で任されたのは、手に負えない生徒
を他の生徒から隔離するために設置された居残り教室。そこ
ではHip-Hop音楽が鳴り響き、社交ダンスなど見向きもされ
なかったが…
まあ、『Shall We ダンス』で見たようなシーンも登場する
し、全体的には甘さも感じられる話ではあるが、元々リズム
感のある若者たちという設定では、話のテンポの良さも気持
ち良く感じられたものだ。
それに、映画製作者が彼しかいないと考えたというデュレイ
ン役のアントニオ・バンデラスや、『Shall We…』にもダン
サー役で出ていたというカティア・ヴァーシラスらによるダ
ンスシーンは、映画の登場人物でなくても学んでみたくなる
ようなものだった。
さらに、スタンダードのダンス音楽をHip-Hopにリミックス
する面白さや、セオリー通りのダンスとセオリーを外したダ
ンスとを見事に対比させた描き方など、これは本当にダンス
や音楽を判っている人たちが作り出した作品と感じられた。
それにしても、本当に踊れる人たちのダンスは見ていて気持
ちが良いものだ。

『題名のない子守歌』“La Sconosciuta”
『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』の
ジョゼッペ・トルナトーレ監督が、2000年の『マレーナ』以
来7年ぶりに発表した作品。
映画は発端で、廃虚のような場所で若い女性を全裸にして品
定めをするという衝撃的な映像から始まる。映画ではこの後
にも、彼女たちを陵辱するシーンが次々に描かれ続ける。
物語の舞台は、イタリアのとある都市、その町に1人の女性
が現れる。彼女はウクライナからの出稼ぎ労働者と称してい
るが、金はかなり持っているようだ。そして彼女は、街角の
比較的家賃の高い賃貸部屋に居を構える。そこからは斜向か
いのアパートが見渡せる。
次に彼女は、その斜向かいのアパートの管理人に清掃人の仕
事を求めに行く。そして、「外国人は困る」という管理人に
破格のリベートを約束してその仕事を受けてしまうのだが…
そこには、彼女の遠大な計画が潜んでいた。
映画では次から次にいろいろな謎が提示されて行く、そして
その謎が徐々に解き明かされて行くのだが、ここから先は何
を書いてもネタばれになってしまいそうな、実に緻密に描か
れた物語だった。
しかも、主人公がその目的のためには手段を選ばない。その
衝撃にも凄まじいものがあった。もちろんそれだけ重要な目

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06月10日(日)
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