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On the Production
by 井口健二
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■デブノーの森、エマニュエルの贈りもの、コマンダンテ、電脳コイル、初雪の恋、テレビばかり見てると馬鹿になる、スパイダーマン3
の夏休み直前にその街に引っ越してきた。
その優子は、祖父からもらった電脳メガネを愛用している。
それは掛けるとネットから送られる情報が立体映像となって
表示され、ヴァーチャルのペットなどが、現実の世界の中に
現れるというものだ。そして、情報インフラの整備されたそ
の街では、子供全員がその電脳メガネを使っていたが…
第2回までの物語では、設定の説明と、優子の飼っている電
脳ペットが、謎の電脳空間に吸い込まれたり、電脳ウィルス
に罹病したり、さらにウィルスを襲撃する謎の球体や怪物に
襲われたりという、そこそこのアクションも織り込んだ物語
が展開する。
ただし、第2回までの物語だけでは、その街の成立の謎は深
まるばかりで、正直なところは、描かれたものの全てに合理
的な説明が付くのかどうかというのが、SFファンの目で観
ていて多少不安になるくらいのものだった。
実際、時代設定は202X年となっているのに、背景に高層ビル
が並ぶ訳でもなく、太い土管の置かれた空き地があったり、
駄菓子屋があったりで、子供たちの遊ぶ姿は昭和30年代の雰
囲気なのだ。
原作・脚本・監督の磯光雄は『エヴァンゲリオン』なども手
掛けているアニメーターということだが、この企画には6年
の歳月を費やしているという。しかもそれがNHK教育のお
眼鏡にも叶っているのだから、いい加減な作品ということは
ないだろう。
それで、もしこれがSFファンの納得の行く結末に到達した
ら、これはもしかすると途轍もない世界観が構築されるので
はないかという予感もさせる、壮大な雰囲気も感じさせてく
れる作品だった。
全26回の物語の中盤は、他の脚本家も動員されるらしいが、
最後の謎解きがどのようになるのか。ちょっと楽しみな作品
になりそうだ。

『初雪の恋』
今年2月紹介の『フライ・ダディ』に出ていたイ・ジュンギ
と、宮崎あおい共演による日韓交流の純愛映画。監督は韓国
人だが、主な舞台は京都で出演者もほとんど日本人という作
品。
イ扮するミンは、陶芸家の父親が日本の大学の講師になった
ために、1年間の予定で京都にやってくる。そして高校生の
彼は日本の高校に通うことになるが、日本語を知らないこと
をいいことに、勉強はサボれると考えている。
ところが、神社で巫女のアルバイトをしながら彼と同じ高校
に通い、絵画の才能も発揮する七重(宮崎)と出会い、2人
はお互いを知るために言葉を憶え、交流を深めようとするが
…そんな2人の姿が、日韓それぞれの文化などを背景にして
綴られて行く。
まあ、七重の家庭の描写などには、いまさらちょっと恥ずか
しくなるような展開もあるが、韓国一「美しい男」と言われ
るイと、少し控え目な感じの宮崎の雰囲気は、たぶんイ目当
ての観客にも障害にならない程度に程よく描かれている。
また、清水寺、南禅寺、知恩院、松尾大社、桂川、渡月橋、
祇園祭、宵山など、映画の中に描かれる京都の風物も、日本
人でない監督の目で、何となく新鮮な感じで捉えられている
のも良い感じだった。
因に、監督のハン・サンヒは新人のようだがミュージクヴィ
デオなどで培われた映像感覚はなかなかのもののようだ。
さらに、御神籤を木の枝に結ぶ日本の風習や、石垣道の韓国
の言い伝えなど、日韓のそれぞれの風習や言い伝えが随所に
ちりばめられ、日本人でも忘れているようなことや、自分の
知らない韓国のことを知ることができるのも嬉しい作品だっ
た。
出演者は、他に塩谷瞬、森田彩華、柳生みゆ、乙葉、余貴美
子など。
なお、雨のシーンは日韓共に人工降水で撮影されているが、
日本のシーンではフィルムに写るように大粒の雨で演出され
ているのに対して、韓国のシーンでは霧のような雨で演出さ
れている。これも日韓の文化の違いのようだ。

『テレビばかり見てると馬鹿になる』
山本直樹によるマンガの原作を、昨年12月に『妖怪奇談』と
いう作品を紹介している亀井亨が監督した。
主人公は、高校を卒業して一旦は就職したが、すぐに辞職し

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04月20日(金)
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