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On the Production
by 井口健二
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■スパイダーマン3(特)、きみにしか聞…、こわれゆく世…、心配しないで、逃げろ!いつか戻れ、待つ女、ストーン…、CALL ME ELISABETH
正直に言って作り過ぎの物語かも知れない。でも、もし自分
がこの立場だったら、自分ならどうするだろうかと、考えて
しまうところだ。その意味では、自分が今まで考えてもみな
かったことを提示されているような感じの物語でもあった。
脚本監督のフィリップ・リオレは、スピルバーグ監督の2004
年作品『ターミナル』の下敷きとなった『パリ空港の人々』
を1993年に発表していることでも知られるが、かなり異常な
状況を物語にするのが得意のようだ。
また本作では、主演のメラニー・ロランが、拒食症のシーン
ではかなり迫真の演じ方で、その姿にも感心させられたもの
だ。それにしても、このときの病院側のかなり酷い対応が描
かれていて、最初はその面の告発も意図しているかと思って
しまったものだ。
実際に、こんなものなのだろうとも思えるが。

『逃げろ!いつか戻れ』“Pars vite et reviens tard”
フランスで新潮流ミステリーの旗手と呼ばれるフレッド・ヴ
ァルガス原作の映画化。
舞台は2000年のパリ。いくつものアパルトマンの扉に裏文字
の4の印が多数発見される。一方、中心街の街角で、料金を
取って大声で広告文を読み上げることを商売にしている男の
許に、現金と共に謎めいたメッセージが届き始める。
そして、この2つの出来事が結びついたとき、連続殺人事件
が起こり始める。しかもその被害者の遺体は斑に黒ずんでお
り、黒死病=ペストを思わせるものだった。
裏文字の4というのはペスト避けのまじないなのだそうだ。
他にも、CLTという言葉が出てきて、これはラテン語の
Cilo,Longe,Tarde(直ちに、遠くへ、長時間)の頭文字で、
ペストに罹らないための唯一の手段と言われていたとも紹介
される。
因に、題名はこのラテン語から来たものと思われるが、映画
の字幕では「すぐに遠くへ逃げろ、ゆっくり戻れ」となって
いた。邦題の「いつか戻れ」ではちょっとニュアンスが違う
ようにも感じたものだ。
物語は、事件を追うパリ警察の警視が主人公。本来は直感で
犯人を突き止める彼が、現在は私生活の男女間系がトラブっ
ていて、勘が冴えないという状況も描かれる。その他にも、
いろいろな状況がばらばら描かれていて、そのどこが本筋か
判らないような中から、徐々に本筋に近づいて行く手法は、
なかなか見応えがあった。
ただし、殺人の背景が過去の経緯に遡って語られるのだが、
その部分がちょっと唐突な感じがして、こういう話なら、プ
ロローグの辺りで多少の前振りがあれば、もっと了解しやす
かったような気もしたところだ。
なお、原作者は考古学者で中世の専門家だそうで、18世紀に
起きたペスト(遺体が黒ずむことはないそうだ)の大流行に
関する言及などは、さすがになるほどと思わせる。
また、警察がぺストのことを極力隠そうとする経緯などは、
日本人にはちょっと判りにくいところだが、情報が漏れた後
のパニックの様子などからは、過去の大流行の恐怖が染みつ
いているという雰囲気が伝わってきた。
アクションも適度にあって、サスペンス映画としても面白い
作品だった。

『待つ女』“7 ans”
夫が7年の刑期で服役し、妻はその7年を、毎週2回の面会
日に洗濯物を届けながら待ち続ける。夫婦でありながらその
間は、夫婦の関係も閉ざされる。
監督はドキュメンタリーの出身で、過去にこのような囚人の
妻たちに取材して作品を作ったことがあるそうだ。その際に
生で聞いた声や証言などを基に、この物語を作り上げたとし
ている。
主人公の女性は、毎週2回の面会日は欠かすことなく洗濯物
を届け続ける。その洗濯物には、夫に贈られた香水が振り掛
けてある。そして彼女も、夫から渡された汚れ物の匂いを慈
しむように嗅いでしまう。
そんなある日、刑務所からの帰り道で彼女は1人の男に声を
掛けられる。男は最初は兄が収監されていると言い、後では
自分は看守だと告白して彼女に近づいてくる。そして2人は
徐々に男女の関係へと進んで行くのだが、実は男には別の目
的もあった。

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03月10日(土)
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