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On the Production
by 井口健二
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■東京国際映画祭2006「アジア風」+「ニッポン・シネマ・クラシック」
とする校長の怪しい動きや、最後にはご丁寧に巨大怪物まで
登場するという代物。
原作はインターネット上に公開された漫画シリーズなのだそ
うで、その過激ぶりは相当のものらしいが、映画化も負けず
劣らずの作品だ。韓国では8月に公開され、『グエムル』の
陰で惨敗したそうだが、監督自身上映後のQ&Aでは、「韓
国の映画ファンには早すぎたようだ」と自嘲気味に語ってい
た。しかしこの後、3月開催のベルリン映画祭への正式招待
が決まったもので、そこでの評価が楽しみなところだ。
実はこの作品、上映スケジュールにはタイトルのみの掲載さ
れていて、公式プログラムにも解説などは一切載せられてい
ない。一種のサプライズ上映として登場したものだが、本国
では公開済の作品に対して、この扱いは解せないところだ。
お陰で上映会場も観客はまばらという状況だったが、監督の
過去のタイトルから見れば、それもおかしな話だった。
僕はタイトルだけに魅かれて見に行ったが、見落とさなくて
本当に良かったと思っている。今回の映画祭は、この作品を
見られただけでも価値があったと言える作品で、ぜひとも日
本での公開を期待したい。
『ヌーヒン』(タイ)
タイで人気のコミックスの映画化。
飛行機と都会に憧れていた田舎の少女が、バンコクのお屋敷
にメイドとして勤めることになるが…ちび丸子も顔負けの傍
若無人で、田舎を出て行くときには村人全員がほっとした顔
をするほどの主人公。その子が、大都会でスーパーモデル・
コンテストに絡む誘拐事件や、強制的に働かされている工場
の少女たちを救出するなど大活躍を繰り広げる。
巻頭には、タイ映画では初めてというアニメーションと実写
の合成でどたばたアクションが描かれたり、かなり力の入っ
た作品で、物語の展開も卒なく楽しめる作品だった。特に、
1000人の応募者から選ばれたという主人公ヌーヒンを演じる
子役の演技が見事だったし、主人公の名前を連呼する主題歌
も軽快で良い感じだった。
『八月的故事』(香港)
九月からの大学予科への進学を控えた少女が、学費を得るた
め叔父の経営するクリーニング屋に住み込みを始める。そこ
には地方出身者の若者がいて…また、その店に仕事を頼みに
来たお金持ちの少女も出入りするようになる。
何となくどこにでもありそうな物語だが、お粥を食べたり麻
雀をしたりという、如何にも中華系の風物の中で綴られると
それなりの趣になる。取り立てて何か見えてくるというよう
な作品ではないが、映画に漂う雰囲気が何となく心を引かれ
るところだった。女性の監督は、2004年の作品が東京国際映
画祭に出品されているそうだが、かなり際どい作品だったら
しい前作の解説に比べると、本作は落ち着いた青春の一面が
描かれている。なお、撮影はヴィデオで行われていて、元々
はテレビ用だったものを長編化した作品のようだ。
『My Mother Is a Belly Dancer』(香港)
若さや美貌、情熱も失って、緊張感のない生活を送っている
主婦を「See-Lai」と呼ぶのだそうだ。この映画の主婦たち
がそこまで落ち込んでいたとは思えないが、そんな主婦たち
が、べリー・ダンスに目覚めたことから始まる騒動を描いた
作品。と言っても、ユーモラスなシーンはあってもコメディ
ではなく、かなりシリアスな物語が展開する。
とある団地の一角。そこの集会所で開かれていたダンス教室
が閉鎖の危機を迎える。それは生徒が集まらなかったせいだ
が、それを聞いた主人公たちは誘い合って教室に参加する。
それはやがて大人気となるが…おへそを出して踊るべリーダ
ンスには、周囲の抵抗も大きかった。かなりシビアな現実も
描かれている作品で、そんな抵抗にもめげずダンスを続ける
女性たちの力強さを感じる作品だった。
<ニッポン・シネマ・クラシック>
『座頭市物語』
1962年製作。この後11年続く人気シリーズの第1作。勝新太
郎の当たり役となる座頭市と、天知茂扮する平手造酒の交流
と対決が描かれる。ユーモアも交えた展開と、壮絶な死闘。
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01月09日(火)
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