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On the Production
by 井口健二
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■墨攻、棚の隅、Starfish Hotel、長州ファイブ、パリジュテーム、天国は待ってくれる、蒼き狼
えるのなら、次も観てみたいと思った。
『長州ファイブ』
江戸末期の1863年。国禁を破ってイギリスに渡った長州藩士
5人。そのメンバーは、後の初代総理大臣・伊藤博文、後の
外務大臣・井上馨、日本鉄道の父・井上勝、工部大学(後の
東大工学部)を設立した山尾庸三、大阪造幣局を整備した遠
藤謹助。
尊皇攘夷の嵐が吹き荒れる中、いち早く海外に目を向け、ロ
ンドンにその範を学びに行った5人の行状が描かれる。徳川
幕府が決めた国禁だから、まあ破られても仕方がないが、見
つかれば死罪ということには変わりがない。そんな危険を犯
して彼らは旅立った。
そしてロンドンで彼らが目の当りにしたものは…高く聳える
セントポール寺院やイングランド銀行、テムズ川を行き交う
多数の蒸気船、陸には蒸気機関車の走る鉄道。とても日本が
勝てる訳がない。そんな思いを糧に、彼らは近代日本の礎と
なるため勉学を始める。
しかし、半年後に馬関戦争が勃発して伊藤と井上馨は帰国。
さらに3年後には病に倒れた遠藤も帰国するが、井上勝と山
尾は5年半に亙って鉄道と造船技術を学びとる。
この山尾を松田龍平が演じて主人公となるが、滞在期間の後
半はグラスゴーに移って造船技術を基礎から学ぶ傍ら、工場
で働く聾唖者の姿から手話も学び、帰国後は、日本最初の聾
唖学校も創設したということだ。
江戸末期の、まだ明治になる前の話。国禁、死罪でなくたっ
て、その旅が命がけだったことには変わりがないだろう。そ
の勇気にはただ敬服するばかりだ。
とまあ、ここまでは良いのだが、ちょっと首と傾げたくなる
のが、VFXのレヴェルのあまりの低さだ。物語は、巻頭で
御殿山のイギリス公使館焼き討ちが描かれるが、これほど酷
い火災のミニチュアワークは、昭和30年代のテレビドラマか
と思うほどのものだった。
実はこの作品は、ハイビジョンで製作されているらしいのだ
が、それに拘わりすぎてミニチュア撮影に不可欠のハイスピ
ード撮影も行っていないようだ。ハイビジョンでもハイスピ
ード撮影は可能なはずだが、それが機材費の関係で無理だっ
たにしても、ここだけフィルムを使う位の才覚はなかったも
のかというところだ。
もちろん、この映画はVFXを見せようという作品ではない
が、せっかくの良い題材が、こんなことで足を引っ張られて
はもったいないという感じがしたものだ。
『パリ、ジュテーム』“Paris Je T'aime”
今年のカンヌ映画祭「ある視点」部門のオープニングを飾っ
た作品。全部で20区あるパリの各所を舞台に、元々の計画は
20本の短編を作ろうとしたようだが、完成公開されたのは、
11区、15区を除く18本というものだ。
全区が揃わなかったのはちょっと残念という感じはあるが、
それでも、グリンダ・チャーダからガス・ヴァン・サント、
コーエン兄弟、ウォルター・サレス、イサベル・コイシェ、
諏訪敦彦、アルフォンソ・キュアロン、ヴィンチェンゾ・ナ
タリ、ウェス・クレイヴン、トム・ティクヴァと続く顔ぶれ
は、正に現代の世界の映画を代表している感じだ。
しかも、それぞれは4分足らずという短編と言うより掌編に
近いものだが、各監督の真髄とも言える作品ばかりで、各監
督のベストとも言える映像が繰り広げられる。
お話は、寸劇のようなものからロマンティックなもの、ミュ
ージカル、ホラー調、ファンタシーと千差万別だが、どの1
本をとっても面白い。思わずニヤリとするものや、ほっとす
るものなど、さすが名うての監督たちの作品という感じだ。
また、出演者も、マリアンヌ・フェイスフル、ジーナ・ロー
ランズ、ベン・ギャザラ、ニック・ノルティといった大ベテ
ランから、スティーヴ・ブシェミ、ボブ・ホスキンズ、ウィ
レム・デフォー、ルーカス・シーウェル、イライジャ・ウッ
ド、さらにカタリーナ・サンディノ・モレナ、ジュリエット
・ビノシェ、リュディヴィーヌ・サニエ、マギー・ギレンホ
ール、エミリー・モーティマー、ナタリー・ポートマンと、
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12月28日(木)
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