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On the Production
by 井口健二
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■酒井家のしあわせ、めぐみ、沈黙の傭兵、恋人たちの失われた革命、パプリカ、ファミリー、華麗なる恋の舞台で
も、結局、革命は成就せずに挫折を味わった当時の若者たち
の姿を写して行く。
主人公は20歳だが、詩人として有望視されており(当時の監
督の分身というところだろう)、闘争の後は、画家や彫刻家
などの芸術家のグループの一員となっている。しかしそのグ
ループは、革命の挫折を繰り言のように話しながら、やがて
はヘロインなどの麻薬に溺れる集団になってしまう。
そんな中で主人公は、彫刻家の恋人を得て、いつしか将来を
夢見るようになるのだが…
日本での学生運動は1969年がピークで、監督より1歳下の僕
はちょうどそのさ中を大学生として体験してきたものだが、
日本の場合は、70年安保は最初から止めようもないと諦めて
いたし、その後に成田などもあったから、それほどの挫折感
は持たなかった。
それに比べると、フランスの学生は本当に革命を夢見、挫折
して行ったことが、この作品でよく判った。そんな中で、主
人公の祖父が挫折感を漂わす孫に檄を飛ばすシーンなどは、
ちょっと微笑ましくも感じられた。因に、主人公とその祖父
は、監督の息子と父親が演じているものだ。
ただし、映画はそれぞれのシーンをかなりの長廻しでじっく
りと撮っているもので、懐かしさを持て見られる僕にはそれ
なりに入って行けたものだが、そうでないとちょっと取っ掛
かりがきついかも知れない。でもまあ、こんな時代が40年前
にあったということを理解してほしいとは思ったものだ。

『パプリカ』
1991年に雑誌連載で発表された筒井康隆の原作小説を、『東
京ゴッドファーザーズ』などの今敏が脚色、監督したアニメ
ーション作品。
他人の夢の中に入り込む装置SDミニの開発を巡って、その
未完成の装置が盗難・悪用されて、装置の暴走により現実と
夢が入り混じり始めた世界を描く。
パプリカとは、この物語の主人公で、装置を使って相手の夢
に入り込み精神分析を行う女性の呼び名。ところがある日、
最終調整の済んでいない装置が盗難に遭い、その装置に関わ
ったことのある人々の現実の中に夢が侵入し始める。
それは最初に装置の開発を行ってきた研究所の所長を襲い、
次いで開発の中心人物だった天才科学者も襲われる。この事
態にパプリカは、昏睡した科学者の夢に乗り込み、その根源
となっている夢を探し出して、盗まれた装置の所在を突き止
めようとするが…
先に『悪夢探偵』を紹介したばかりだが、本作は悪夢と言う
より誇大妄想狂の造り出した夢世界で、何しろ次から次に奇
っ怪なものが登場してくる。その映像はパレードの形で表現
されるが、いろいろなものが列を為して練り歩く姿は見もの
だった。
夢を描く映像というのは、イマジネーションの極致とも言え
るもので、生半可な作りでは観客を満足させられない。この
作品の場合は、原作にある程度のことまでは書かれていると
は言うものの、これはまさに原作者の頭の中を覗いている感
覚で、筒井康隆の奔放なイマジネーションが見事に映像化さ
れたものだ。
それはまた、生物でないもののが生物化したり、メタモルフ
ォーズや液状化など、まさにアニメーションの世界そのもの
と言えるもので、最近はCGIなどで実写でもかなりの映像
が造り出せるが、この作品こそは、アニメーションの特性が
最も活かされた作品と言うことができそうだ。
また最近のアニメーションでは、実写でもできると思わせる
作品も見かけるが、この作品はアニメーションだからこそ、
と言える感じのものだ。それに、2面性を持ったパプリカの
愛らしさやセクシーさも、なかなか生身の俳優では描き出せ
るものではない。
また、作品には映画青年の夢みたいなものも描かれていて、
その点でも気に入った。さらにプロの声優たちに交じって、
筒井、今の声の登場も聞き物となっている。

『ファミリー』(韓国映画)
窃盗と傷害で3年の刑に服した女性が保護観察付きで出所し
てくる。彼女は、保護官の斡旋で美容院に勤め始める。美容
師は彼女の幼い頃からの夢だ。

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11月10日(金)
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