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On the Production
by 井口健二
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■ヘンダーソン夫人の贈り物、ハヴァナイスデー、家門の危機、出口のない海、武士の一分、敬愛なるベートーヴェン、ダンジョン&ドラゴン2
物語は、全体として戦争の愚かさを伝えようとしているもの
だが、それにしても余りに愚かしい話で、ここまで来ると、
僕としてはちょっと退いてしまう感じもあった。もっともそ
のようなシーンで周りはハンカチが忙しかったようだが…
まあ、これで涙に暮れてくれれば、反戦の意味も伝わると思
うが、それ以前に国威発揚的な言動が繰り返されるシーンが
あったりすると、僕としては疑問も感じてしまうところだ。
ましてや予告編ではそこが強調されてしまう訳で…。結局、
反戦映画というのは難しいものだ。
CGを使った艦船の姿や、戦災の東京の風景などは概ね良く
できていたと思う。ただし、太平洋上のはずの米国艦船との
対峙シーンで、手前の海面に定置網のブイと思われるものが
見えるのはいかがなものか。何となく波も内海のもののよう
に思えてしまった。

『武士の一分』
最近邦画を紹介することが多くなっているが、それらは基本
的に洋画配給会社が日本映画を製作したり、独立系の作品だ
ったりするもので、特別な場合を除いて、いわゆる邦画大手
の試写会を見る機会はなかったものだ。ところが、この夏頃
から松竹映画が試写状を送ってきてくれるようになった。
ということで、この作品は、松竹製作の山田洋次監督による
時代劇三部作の完結編と呼ばれているものだが、上記の経緯
のため、僕は前の2作を見ていない。といっても別段つなが
りのある話ではないようだから問題はないものだが。
前の2作では、それぞれ父と娘の絆と身分の違う男女の愛を
描いたそうだ。そして今回は夫婦の愛が描かれる。毎回テー
マが違うのは大したものだが、その中で完結編が夫婦愛とい
うのは、昨今の家族関係が希薄になりつつある日本では一石
を投じる感じだ。
物語の背景は、天下泰平の江戸時代。主人公はとある小国で
禄高三十石の下級武士。両親はすでになく、若い妻と父の代
から仕える中間と共に、穏やかに暮らしてはいるが、実は剣
術は免許皆伝、藩校でも秀才とうたわれた男だった。
しかし、城でのお役目は毒味役、それは台所の隅で他の武士
たちと共に椀のものを一口食べるだけのこと。そんなお役に
は不満もあるが、それは仕方のないこと、彼には早目に引退
して子供たちに剣術を教えたいという夢もあった。
ところがその生活が暗転する。毒見で食べた貝毒に当り、一
時は意識不明、妻の必至の看病でそれは脱するが、失明して
しまう。これでは城のお役は御免必至で、そうなれば家名を
保つこともできず、住む家も返さなければならなくなる。
この事態に妻は、以前から好意を寄せてくれていた上級武士
に援助を求めに行くのだったが…そして後半は、全くの絶望
の縁に立たされた主人公が、それでもただ一つの信ずるもの
のために生きて行く姿が描かれる。
出演は、主人公に木村拓哉、その妻に元宝塚娘役トップの檀
れい。他に笹野高史、桃井かおり、坂東三津五郎。
木村は、幼い頃から剣道を習っていたということだが、その
剣捌きは、特に木刀での練習シーンに迫力があった。まあ、
決闘のシーンは演出も入るからそれなりになってしまうが、
それまでの本気で振っているシーンは見事だったと思う。
しかも、盲目という設定では、目を見開いたままうつろとい
う演技を見事に行っていて、それも迫力のあるものだった。
実は山田洋次監督には、ずっと以前に某アメリカSF映画の
ムック本を編集した際に、コメントを取りに行ってもらった
編集員から、「一言『関係ないですね』という返答だった」
と聞かされて以来、自分の映画観とは関係ない人だと感じて
いた。だからそれ以降は作品も見ていなかった。
それを今回、数10年振りに山田監督作品を見たものだが、も
ちろんこれだけで認識が変ったという訳ではない。しかし、
壺を心得た物語の展開のさせ方にはさすがと思えたものだ。
作品的には、これでひとまず時代劇三部作は終えたというこ
となので、次回作には少し注目してみようかとも思ってしま
った。

『敬愛なるベートーヴェン』“Copying Beethoven”

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09月20日(水)
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