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On the Production
by 井口健二
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■クリムト、西瓜、ミラクルバナナ、愛と死の間で、サラバンド、夢遊ハワイ、マイアミ・バイス
得ているようだ。
ハイチと言われても、映画の中に出てくるようにヴードゥー
教ぐらいのイメージしか湧かない。そんな地球の裏側で日本
人が起こした小さな奇跡を現地にまで行って映画にする。そ
れ自体が必要かとも問われてしまいそうな作品だが、この作
品が日本で上映され、これを見た人の心に何かが残れば、そ
こからまた何かの奇跡が起こりそうな感じもする作品だ。
因に、主人公の出身地が愛知県なのは、ハイチがフランス語
圏で、発音ではHが消えてアイチに聞こえることからの親父
ギャグなのだそうだ。そんなセンスもうれしい作品だった。

『愛と死の間で』“再説一次我愛你”
アンディ・ラウ主演で、優秀な外科医の主人公とその妻の心
臓を巡る数奇なドラマ。
主人公は総合病院の外科医だったが、優秀であるために帰宅
時間も儘ならず、新婚の妻との約束も翌日に延ばしてばかり
いる。そんなある日、彼を自家用車で迎えに来ていた妻が事
故で帰らぬ人となってしまう。
それから5年後、主人公は、亡くなった妻の父親が隊長を務
める救急隊の隊員となっている。そして出動の帰途、事故を
目撃した彼は、事故の被害者の女性が5年前に彼の妻の心臓
を移植された患者であったことを知る。しかもその時、彼女
は夫との仲に苦しんでいた。
ここまでで変なことを想像した人は、ここから後の捻りの利
いた物語の展開に嬉しくなるに違いない。香港映画界を代表
するラウは、かなりトリッキーな設定を見事に消化して、素
晴らしい物語を見せてくれる。
しかもそれを、観客には手の内を全て曝しながら描いて行く
のだから、この構成は見事なものだ。脚本監督は、ラウと共
に香港の製作会社フォーカスを主宰するダニエル・ユー。ま
た、テレビ出身のリー・コンロッが共同脚本と共同監督を務
めている。
因にラウは、『インファナル・アフェア/終極無間』直後の
出演で、極めて複雑な役柄の後にはストレートな人物を演じ
たかったということだ。その点で言うと、本作の人物像は確
かにストレートだが、物語は実にうまく捻られたものだ。
共演は、『セブンソード』のチャーリー・ヤンと、『ドラゴ
ン・プロジェクト』に出演していたツインズのシャーリン・
チョイ。他に、日本を舞台にした『頭文字D』に主演して昨
年の台湾金馬奨と香港電影金像賞のW受賞に輝いたアンソニ
ー・ウォン。
心臓移植に絡めて精神的な葛藤を描くドラマというのは、普
通なら患者が中心に描かれそうなものだが、それを心臓提供
者の夫の立場から描くというのは面白いアイデアだ。しかも
そこにうまい捻りが入ることで、ドラマが巧妙に展開してい
る。
もちろん、万に一つも起きないであろう物語ではあるが、ア
ンディ・ラウの魅力でうまく見せられてしまうという感じの
作品だ。それもまた映画というところだろう。

『サラバンド』“Saraband”
イングマール・ベルイマン監督による2003年作品。ベルイマ
ンは1918年の生まれというから、本作は85歳の時の作品。こ
の前の映画作品は、1985年の『ファニーとアレクサンデル』
だそうだから、20年ぶりの映画作品ということになる。
ただし、1985年以降もテレビ作品や脚本は何本か手掛けてお
り、引退していた訳ではない。そして本作も、撮影はHDで
行われていて、その点ではテレビ作品の延長とも言えるが、
がっちりした骨格の内容は、さすがに巨匠と呼ばれる監督の
作品だ。
作品は、1974年製作の『ある結婚の風景』の続編とも言える
もので、同作に主演したリヴ・ウルマンとエルランド・ヨセ
フソンが、離婚後30年を迎えた元夫婦を演じる。そして物語
は、元妻が隠遁生活を送っている元夫を訪ねようと思い立つ
ところから始まる。
その元夫は、大自然の中に建つ別荘で暮らしているが、その
近くに所有するロッジには、音楽家の息子が音楽院への受験
を控えた愛娘のチェロの特訓のため、2人だけの生活を続け
ている。そんな状況の中で各家族のさまざまな葛藤が描かれ
て行く。

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07月31日(月)
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