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On the Production
by 井口健二
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■チーズとうじ虫、ダスト・トゥ・グローリー、THE WINDS OF GOD、ママン、ハイテンション、狩人と犬、森のリトルギャング
その根底から覆されることになる。実は母親が、父親以上に
堕落した女であることを告白し、主人公にも自分と同じ生活
をするように仕向けたのだ。そして彼のもとに1人の若い女
性が現れる。
このような物語が、ヨーロッパ最高のリゾート地とも言われ
るスペイン・カナリア諸島を舞台に繰り広げられる。
つまり、不道徳な母親によって堕落して行く若者の姿を描く
ものだが、まあ何と言うか、原作の発表された時代とは社会
通念のようなものも変化してしまっているし、それを現代に
通用させるためには、宗教的なものを持ち出さざるを得なか
ったのだろうが…
それが日本人というか、神との付き合いの少ない僕のような
人間にはなかなか感覚的に掴み難い。ただしこの映画では、
主人公が結構ぎりぎりまで宗教的に縛られていたりして、い
ろいろ悩んでくれたりもするので、そこから理解の糸口は得
られた気はしたものだ。
日本映画でもこの種のタブーを描いた作品はあると思うが、
この作品を見ていると宗教のような共通する最後の拠所のな
いのが、日本のドラマ作りで致命的な弱さのようにも思えて
しまう。つらつらそんなことも考えてしまった。
出演は、2001年の『ピアニスト』でのカンヌ最優秀女優賞受
賞や、ジュード・ロウ共演の『ハッカビーズ』にも出ていた
イザベル・ユペールと、2006年のセザール賞で新人男優賞を
獲得したルイ・ガレルが、母子を演じる。特にユペールの存
在感は見事だ。
なお、監督のクリストフ・オノレは1970年の生まれ、2003年
4月頃に紹介した『NOVO』の共同脚本も手掛けている。
その作品でも大胆な描写を話題にしたが、元々は小説から戯
曲、詩、さらに絵本まで手掛ける文筆家だそうだ。
そして、2002年に映画監督デビューしているが、その作品は
カンヌ映画祭の「ある視点」部門で上映されるなど、実力は
かなり認められている。本作は第2作のようだが、出来たら
デビュー作も見てみたいし、また現在製作中の次回作にも期
待したいところだ。
『ハイテンション』“Haute Tension”
主人公は、試験勉強のために同級生の実家である農場にやっ
てきた女子大生。ところがその農場に殺人鬼が現れ、同級生
の両親と幼い弟を殺害、さらに同級生が拉致される。
その犯行の時、主人公は咄嗟に身を隠して難を逃れていた。
そして拉致された同級生の救出のため、殺人鬼の車を追って
行くが…というフランス製のスプラッター映画。
こういう作品は、どう紹介してもネタバレになってしまう。
以下はそのネタバレです。
確か1年くらい前にも、都会を舞台にした同じようなテーマ
のヨーロッパ作品があったと思うが、結局のところ犯人の意
外性みたいなものが勝負になる作品。大本はヒッチコックと
いうことになりそうだが、それが判った時点で思い返して、
「ああ成程」となれば成功と言えるタイプの作品だ。
ところが、1年前の作品も何か辻褄が合わない感じがしたも
のだが、今回の作品に至っては、そんなことはまるで無視。
実は結末は予想していたので、それなりに気をつけて見てい
たが、正直に言って、いくら考えても言い訳が出来ないほど
辻褄は合っていなかった。
ただし本作は、それをスプラッターで押し切ってしまおうと
いう魂胆の作品。だから若い女性が、チェーンソウならぬ原
動機付き丸鋸を振り回したり、足に刺さったガラスの破片を
引き抜いたりと、大活躍を繰り広げる。それを楽しめば良い
という作品だ。
アメリカでは、『SAW』シリーズのヒットなどでスプラッ
ターが復権してきているが、ヨーロッパ映画もそれに敏感に
反応しているというところなのだろうか。
主演は、『スパニッシュ・アパートメント』でセザール賞新
人賞を受賞。最近では『80デイズ』にも出演していたセシ
ル・ドゥ・フランス。同級生を『フィフス・エレメント』な
どに出演のマイウェン。そして殺人鬼を『クリムゾン・リバ
ー』『ジェボーダンの獣』などに出演のベテラン、フィリッ
プ・ナオンが演じている。
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06月29日(木)
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