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On the Production
by 井口健二
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■第113回
        *         *
 2003年5月1日付第38回で紹介したニコラス・ケイジ主演
による“Ghost Rider”については、実は昨年夏に撮影が行
われ、当初は今年7月14日の公開を目指して製作が進められ
ていた。ところが昨年12月になって、突如その公開を2007年
2月16日に半年以上延期することが発表され、この延期に関
しては、MGMの買収で作品のだぶつくソニーが公開場所を
失ったのではないか、などの憶測が飛び交っていた。しかし
その真相が製作者でもあるケイジの口から報告された。
 その報告によると、公開の遅れは純粋にVFXの完成度を
高めるためだったということだ。それは映画のクライマック
スで、主人公がヘリコプターと共に闘うシーンということだ
が、すでに会社側のOKは出ていたにも関わらず、脚本・監
督のマーク・スティーヴ・ジョンスンが納得せず、作り直し
が進められた。その結果はケイジの発言によると、「奴らは
本当に凄いよ」ということなのだそうで、ケイジ自身のドリ
ームプロジェクトでもあるこの作品は、かなり満足の行く出
来になっているようだ。
 お話は、以前にも紹介したように、闇の力に魂を売り渡し
たオートバイレーサーの主人公が、彼を愛する女性を守るた
めに闇の力に反抗し、彼らとの闘いを始めるというもの。こ
れに、一時は『ブレイド』などのスティーヴン・ノリントン
監督も関っていたが、最終的には『デアデビル』のジョンス
ン監督が映画化したものだ。
 因に、ヒーローアクションもので2月の公開というと、昨
年の『コンスタンティン』のように、ちょっとダークサイド
を持ったヒーローが活躍する作品が生まれる時期で、今回の
作品もその路線に乗ったものになるようだ。その路線からも
ちょうど良い時期の公開になりそうだ。
 なおケイジは、現在リー・タマホリ監督でフィリップ・K
・ディック原作の“The Golden Man”を映画化する“Next”
を撮影中で、今回の発言はその休憩時間に行われたインタヴ
ューに答えたものということだ。
        *         *
 続報はこのくらいにして、ここからは新しい話題を紹介し
よう。
 ディズニー傘下のミラマックス時代には、『HERO』や
『もののけ姫』のアメリカ公開を手掛けたワインスタイン兄
弟が、新会社でも積極的にアジア作品に関わる姿勢を見せ始
めた。
 その一端としては、すでにタイ映画『トム・ヤム・クン』
のアメリカ配給に続いて、同じくトニー・ジャー主演で今秋
撮影される“Ong-Bak 2”(『マッハ!』の続編)の北米配
給権も獲得しているものだが、今度はチャン・ツィイーとの
3作品の契約が発表され、この契約では製作段階から直接関
わることになるようだ。
 その1本目には、1998年にディズニーが長編アニメ化した
ことでも知られる中国の民話に基づく女性レジスタンス闘士
の物語“Mulan”を、実写で映画化する計画が発表された。
この計画では、『グリーン・ディティニー』などのワン・ホ
エリンが脚本を担当し、製作費2000万ドルを掛けて来年2月
の撮影予定になっている。因にこの物語は、1956年に中国で
実写映画化された記録があるそうで、今回はそのリメイクと
いうことになるようだ。
 そして2本目もリメイク計画で、何と黒澤明監督の1954年
作品『七人の侍』を、ツィイーの主演で映画化すると発表さ
れている。こちらはまだ本当の計画段階のようだが、以前に
は西部劇でもリメイクされたこの物語を、女性を主人公にし
て一体どんなお話になるか楽しみだ。
 さらに3本目の計画については、今後改めて発表されると
いうことだ。
 それにしても、“Mulan”のリメイクとはディズニーへの
対抗意識も感じられるところだが、中国映画界にはそのディ
ズニーも含め各社入り乱れての参入合戦が続いており、その
中で、今回のTWCとツィイーとの契約は、一歩リードの感
じもするところだ。
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06月15日(木)
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