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On the Production
by 井口健二
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■マッチ・ポイント、DEATH NOTE、夜のピクニック、カーズ、キンキー・ブーツ、いちばんきれいな水、フラガール
・ストーリー2』以来のジョン・ラセターが、脚本・監督を
手掛けている。
物語の主人公は、史上初の新人によるシリーズ優勝に王手を
掛けている花形レーシングカーのマックイーン。ライヴァル
は今期で引退が決めているキングと、万年2位だったチック
・ヒック。しかし最終戦は3車同着となり、1週間後の再戦
で決着をつけることになる。
その再戦の場所カリフォルニアに向け、トレーラーの中で休
息しながらフリーウェーを進んでいたマックイーン。ところ
が、彼がトレーラーに無理強いをしたために起きたちょっと
した事故で、彼はトレーラーを振り落とされ、旧道に迷い込
んでしまう。
そして辿り着いたのは、田舎町ラジエータースプリングス。
そこはフリーウェーが迂回したために、地図からも消されて
しまった寂れ切った町。
『ルート66』というと、軽快な主題歌と共に大人気だった
テレビシリーズを思い出す世代としては、そのかつての幹線
道路が今やフリーウェーによって寸断され、以前は華やかだ
った沿線の町が寂れているという現実はショックだった。
でもそんな町だからこそ、昔の人情が残っていて、旅人を温
かく迎え入れてくれる(多少頑固で強引ではあるが…)。高
度成長の陰に消えそうになっている古き良きものを取り戻し
たい。そんな思いは、アメリカ人も日本人も同じなのかも知
れない。
物語には人間は全く登場せず、小さな羽虫まで全てが自動車
の形をしているカーズの世界が描かれる。正直に言ってその
世界を受け入れられるか否かが観客としては勝負になるが、
キャラクター自体は見慣れた自動車なので、僕にはあまり違
和感はなかった。レーサーから軍用車、それに当然パトカー
や消防車などの個性も豊かだ。
また、数々登場するギャグやパロディは、そんなことを抜き
にしても充分楽しめるし、巻頭から登場するレースシーンは
CGIと判っていてもかなりの迫力だった。それに、かなり
アレンジされてはいるが『ルート66』の主題歌が聞こえて
きたときは、正に感動ものだったと言える。
なお、オリジナルの声優では、1995年のデイトナ優勝の記録
も持つポール・ニューマンがキーマンとして登場する他、現
役F1レーサーのゲスト出演もある。
『キンキー・ブーツ』“Kinky Boots”
2003年の東京国際映画祭のコンペティション部門で上映され
た『カレンダー・ガールズ』の製作者、脚本家が再結集した
ブリティッシュ・コメディ。
イギリス中部の町ノーサンプトン。ロンドンの北に位置する
この町は、古くから革靴を地場産業として栄えていた。しか
し、近年は東欧圏からの安物の輸入靴に押され、すでにその
命運は尽きかけていた。
主人公は、そんな町で4代続く靴製造工場の跡取り息子。し
かし性格は優柔不断、キャリアウーマンの婚約者の尻に敷か
れ、ついには彼女のロンドン転勤を機に町を出ることを決意
して、ロンドンの新居に引っ越すが…
その家具も揃わない内に父親の訃報が届き、彼は工場の社長
として町に舞い戻ることになってしまう。ところがその工場
はすでに倒産状態、父親は温情というか、無策のまま社員を
雇い続けていたのだ。そして彼には、社員の首を切る仕事だ
けが残されていた。
こうして、日々社員の首を切るだけの仕事を続ける主人公だ
ったが、ある日若い女性社員から、何故新しい市場を見つけ
ないのかと詰問される。
そこでふと思いついたのが、ソーホーで偶然知り合った女装
バーのドラッグクィーン。女性用のハイヒールでは体重を支
えきれないと語る彼女(彼)の言葉に、男性向けのハイヒー
ルブーツの開発を始めるが…そこには試行錯誤の上に、世間
の偏見が満ちあふれていた。
イギリスのコメディというと、ピーター・セラーズからモン
ティ・パイソンまで、かなり過激な笑いを狙う印象があった
が、『カレンダー…』辺りからはもっと穏やかな笑いの路線
が誕生したようだ。と言っても、熟女ヌードと女装用ブーツ
はかなり過激だが…
ただし『カレンダー…』も本作も実話に基づいているという
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06月14日(水)
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