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On the Production
by 井口健二
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■深海、タイヨウのうた、日本沈没
方にしてからが、潜航艇で海に潜って行く辺りまでは『ジュ
ピター』へのオマージュを感じさせたが、やっていること自
体は『アルマゲドン』と『ザ・コア』のパクリとしか言いよ
うがない。
それに、このやり方自体が、常識的に見て容認できるものか
どうか。第1にあんな程度のことでプレートを断裂出来るも
のとも思えないし、仮に出来たとしても、ほんのちょっとの
歪みの解消でも大地震を引き起こすプレートの変動を、あん
なに大規模にやられて、そのマグニチュードは…? それこ
そ日本沈没級のものだろう。
小説も含めた前作の中では、エネルギーが日本海側に抜ける
トンネル効果の表現が科学的考証では一番の弱点と言われた
ようだ。でも、僕はそこがSF的外挿法として一番好きな部
分でもあった。でも今回のこれはその範疇を超える。これで
は、さぞや竹内均先生も草葉の陰でお怒りのことだろう。
田所が新聞紙を破ったり、国宝の仏像を運び出すシーンがあ
ったり、前作へのオマージュと思われるシーンはいろいろあ
るが、特に後者は前作を見ていないと殆ど意味不明のシーン
になってしまっている。これでは新たな観客に失礼だ。
さらに監督は、脚本の弱さをいろいろなオマージュで糊塗す
ることを製作方針としたようだ。それは、木造家屋の下町風
景やエピローグの政治家の演説などに端的に現れる。これら
は昔の東宝特撮映画のパターンだったものだ。
でもこれは当時から批判の対象でもあったもの。これで特撮
マニアを喜ばせたつもりだろうが、いまさらやられても恥の
上塗りの感じだ。
一方、どうせここまでやるなら、最後に主人公が救出される
エピローグでも付けたらいいという意見もあるようだ。浜松
辺りの海岸に潜航艇の残骸が打ち上げられ、そこから主人公
が出てきてヒロインと抱き合うとか…
実は、『さよならジュピター』の映画化の後で、僕は小松氏
から、「『ジュピター2』は主人公がジュピターゴーストに
救出されるシーンから始まる」と聞かされたことがある。も
ちろん冗談だが、どうせやるならゴジラが潜航艇の残骸を抱
えて浜松に上陸してくるのも良かったように思えた。
結局のところ、この作品の問題点は、監督がオマージュに拘
わりすぎたことと、それで満足してしまったことにあるよう
に思える。最初に用意された脚本がどのようなものかは判ら
ないが、それを読んだ監督がそれでは駄目だと感じたところ
はあったのだろう。
でも、やるべきことはこのような誤魔化しではなかった。努
力の跡は見られるが、その努力を傾注する方向性が間違って
いる。そんな風に感じられる作品だった。
(6月3日更新)

05月31日(水)
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