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On the Production
by 井口健二
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■トランスアメリカ、ロンゲスト・ヤード、アンダーワールド・エボリューション、間宮兄弟、RENT、ナイロビの蜂、セキ★ララ
弟がボッタクリバーに引っかかったりというエピソードが続
くが…
正直に言って、大きな事件が起こる訳でもなく、ドラマティ
ックなところも殆どない。これが万人に受けるかと言われる
と、多少迷うところでもあるが、たまにはこんな何も起こら
ない話があってもいいじゃないか、という感じの作品だ。
物語はそんなところだが、実は兄弟の住む部屋のセットが、
本がぎっしり本棚に並んでいたり、鉄道模型や飛行機の模型
など、「マニア兄弟だな」というせりふが有るくらいのもの
で、それはかなり面白く見られた。
主演の2人を囲んで、常盤貴子、沢尻エリカ、北川景子、戸
田菜穂、岩崎ひろみら多彩な女優陣が共演。中でも北川は、
この後にハリウッド映画の『ワイルド・スピード3』が控え
ており、その前に見ておきたい女優というところだ。
『RENT』“Rent”
1996年2月のプレヴューの前日に作者が35歳で急死するとい
う衝撃の開幕の後、3カ月でブロードウェイに進出、そして
今もロングラン中という伝説のミュージカルの映画化。
1980年代末のニューヨークのイーストヴィレッジを舞台に、
芸術家を夢見て集う若者たちを描いた作品。
だが、背景となる1980年代末はエイズ蔓延期であり、貧困、
犯罪、ドラッグ、同性愛、友の死など、社会から排斥され、
夢を奪い去る出来事が次々と襲いかかる。しかし、そんな悪
環境の中でも、夢を信じ、夢に向かって進んで行く若者たち
の姿が描かれる。
青春ものと言ってしまえばそれだけだが、目標が定まってそ
こに向かって行くような単純なものではない。自分たちの目
指すものも判らず、もがき苦しんでいる。そんな若者たちの
物語だ。それはちょうど、現代の若者たちの姿にも重なるよ
うでもある。だからこそ、今の時期の映画化が実現したのだ
ろう。
監督はクリス・コロンバス。1980年代を含む17年間をニュー
ヨークで暮らしていたという彼は、ブロードウェイでの上演
開始直後に舞台を見て直ちに映画化を希望したという。それ
から10年を経て、まさに満を持しての監督という感じだ。
そのコロンバスの演出は、ニューヨークの市街地のロケや、
ILMが手掛けるVFXを含め映画的な処理も随所に施され
てはいるが、全体はオーソドックスな歌と踊りのミュージカ
ルの味わいを見事に活かし切ったものだ。
特に、巻頭で8人によって歌われる「シーズンス・オブ・ラ
ヴ」のシンプル、且つ力強い熱唱は、これから語られる物語
の全てを予感させる。
そして出演者は、オリジナルキャストからの5人に加えて、
『シン・シティ』のロザリオ・ドースン、テレビ出身のトレ
ーシー・トムズ、テレビや舞台でも活躍するジェシー・L・
マーティン。彼ら総勢8人の群像劇が見事に演じられる。
中でも、オリジナルメムバーではエンジェル役のウィルスン
・ジェレマイン・ヘレディアが見事なパフォーマンスを見せ
てくれる。一方、ドースンは、年齢的にも他のメムバーから
は飛び抜けて若いハンデを負う中で、難しい役柄をしっかり
と演じていた。
大元の着想は、プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』から得
られたものだそうだが、そのオリジナルも含めていろいろな
ミュージカルや映画へのオマージュも数多く見られ、それも
含めて映画ファンとしては心地よい作品でもあった。
『ナイロビの蜂』“The Constant Gardener”
ジョン・ル=カレ原作の同名の長編小説の映画化。その監督
を、『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレス
が手掛け、主人公の妻を演じたレイチェル・ワイズがアカデ
ミー賞助演女優賞を獲得した。
巻頭、一人の女性が奥地に向かう飛行機に乗り込む。それを
見送る夫は、2日後に会おうと声を掛けるが、その2日後、
彼の元に不吉な報告が届けられる。
主人公はイギリスの外交官。と言っても実はガーデニングが
趣味で、外交の仕事はほとんどイエスマンで通している。そ
んな男が、ある日、ワシントンで開かれた記者会見に上司の
代理で出席し、出席者の一人の若い女性から手厳しい質問を
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03月31日(金)
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