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On the Production
by 井口健二
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■キスキス,バンバン、隠された記憶、ぼくを葬る、プロデューサーズ、戦場のアリア、僕の大事なコレクション
当の知識とブルックスコメディへの思い入れが要求されたも
のだ。
そのブルックスが大復活を遂げた作品ということで、僕は期
待半分、心配半分という感じで見に行ったのだが…心配はま
ったく無用。パロディは実に判りやすく、ギャグは日本で言
えば吉本新喜劇というところだが、吉本と同様、充分に市民
権を得られるものだった。
物語の舞台は1959年のニューヨーク。レーンが扮するのは、
昔はヒット作を生んだこともあるブロードウェイのプロデュ
ーサー。しかし今は落ち目で、ようやく完成した新作の舞台
も、初日で打ち切りの憂き目にあってしまう。
ところが、彼のオフィスに帳簿の整理にやってきたブロデリ
ック扮する会計士が、ある事実に気づく。それは、舞台が失
敗すると俳優やその他の経費を払わずに逃げることが出来、
うまくやれば集めた出資金を持ち逃げすることも可能だとい
うことだ。
そこで製作者と会計士は、絶対当らない脚本と、ろくな演出
のできない演出家と、演技も踊りも駄目な俳優を集めて、絶
対に失敗する舞台を製作。そこに小金を溜め込んだ未亡人た
ちから出資金を集め、200万ドルをせしめる計画を立てる。
そのため選ばれた脚本は社会的なタブーに触れるもので、演
出家はゲイ、俳優はド素人のドイツ人と英語もろくに話せな
いスウェーデン女優という舞台が製作される。そしてその舞
台が初日を迎えるのだが…
これに飛んだり跳ねたり、転けたりのベタなギャグや、ちょ
っとエッチなくすぐりなども満載で物語が進行するものだ。
もちろん映画や舞台のパロディもいろいろ登場するが、そん
なこと一々考えていられないほどテンポが速く、上映時間の
2時間14分はあっという間に過ぎてしまった感じがした。そ
して、僕が映画を見ながら声を上げて笑ったのは、本当に久
しぶりのことだった。
出演者は舞台からのメムバーがほとんどだが、中でウィル・
フェレルが演じるドイツ人とユマ・サーマンが演じるスウェ
ーデン女優が映画用にキャスティングされている。この内で
サーマンはそれなりの感じだが、フェレルの芸達者ぶりには
舌を巻いた。
フェレルの演技は、昨年はニコール・キッドマン主演の『奥
様は魔女』と、その後でBSで放送された『エルフ』を見た
が、どの作品も感心して見てしまったものだ。そのフェレル
の芸が今回も最高に発揮されていた。
なお試写会場で、映画から舞台になってまた映画化された作
品が他にあるかというような話をしている人がいたが、本作
以外でも、1960年のロジャー・コーマン作品が舞台ミュージ
カルになり、さらに1986年に映画化された『リトルショップ
・オブ・ホラーズ』などがそれに当る。
その他にも、『サウンド・オブ・ミュージック』は1956年の
西ドイツ映画『菩提樹』が元になっているし、『オペラ座の
怪人』もガストン・ルルーの原作のミュージカル化というよ
りは、1925年のロン・チェニー版映画の演出を踏襲している
部分が多いものだ。
なお、自作にいつも登場するブルックスは、エンドクレジッ
トでは今回は鳩と猫という人を食った役名が表示されていた
が、本人は映画の最後の最後に登場している。実は、長年連
れ添ったアン・バンクロフトが昨年6月に亡くなって、この
シーンの撮影はその後だと思うが、彼の表情にちょっと哀愁
を感じたのは僕だけだろうか。

『戦場のアリア』“Joyeux Noël”
1914年、第1次世界大戦の勃発した年のクリスマスに起きた
出来事の実話に基づくフランス映画。フランスでは2005年の
観客動員第1位を記録した作品ということだ。
1914年8月3日に第1次世界大戦が開戦して4カ月半が過ぎ
た頃。ドイツ占領下のフランス北部の村デルソーでは、ドイ
ツとフランス+スコットランドの部隊が1軒の農場を巡って
対峙していた。
スコットランド部隊にはある教区から来た若者とその教区か
ら派遣された神父が従軍しており、ドイツ部隊にはベルリン
オペラの花形だったテノール歌手が従軍していた。そしてフ

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03月14日(火)
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