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On the Production
by 井口健二
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■レジェンド・オブ・ゾロ、ザスーラ、クラッシュ、好きだ、プルーフ、ロード・オブ・ドッグタウン、エンパイア・オブ・ザ・ウルフ
そんなアメリカの真実の姿が曝け出された作品だ。
しかし映画の製作者はそんな中にも僅かな希望を見出そうと
し、無理を承知の夢を語りかける。勿論それが偽善であるこ
とは観客は百も承知だが、それを言わずにはいられない。そ
んなぎりぎりのアメリカが描かれた作品とも言えそうだ。
主演のチードルは製作にも名を連ねていて、その意味では黒
人主導で作られた作品の可能性はある。しかし映画は、黒人
の立場に偏って作られたものではなく、あえて黒人社会の悪
い面も描いている。でも、結局のところはそれも描かなくて
はならないような混沌とした現実が、真にこの映画の描きた
かったところかも知れない。
結末の曖昧さが、それを象徴しているようにも見えた。
『好きだ、』
CF監督で、2002年に映画作品『tokyo sora』を発表してい
る石川寛の第2作。17歳の高校生の恋愛と、その17年後の再
会が描かれる。
高校3年生のユウは、野球部を辞め音楽で生きると宣言して
ギターを始めたヨースケが気になっている。ユウはヨースケ
が弾くギターのフレーズを口ずさむが、その曲はまだ完成し
ていないようだ。
しかしヨースケは、ユウよりも最近恋人を事故でなくした彼
女の姉に好意を持っており、ユウの引き合わせでヨースケと
会った姉もまた、そのフレーズを口ずさみながら家事をする
ようになる。そしてある出来事がきっかけでユウとヨースケ
は会わなくなる。
17年後、音楽業界の片隅で仕事をしているヨースケは、自分
の続けている仕事や生活に疑問を持ち始めている。そんなあ
る日、レコーディングスタジオに入ってきた女性が、ギター
で聞き覚えのあるフレーズを爪弾く。
17年間に変わってしまったことと変わらなかったこと。17年
前にしたかったことと出来なかったこと。青春ってこんなも
のだったのだろうと思いながら、こんな偶然にも憧れてしま
う。そんな青春と夢を、石川監督は端正な映像と、落ち着い
た演出で描き出す。
作品は、今年9月のモントリオール映画祭に出品されて、審
査委員長のクロード・ルルーシュから「グランプリに匹敵す
る監督賞」と絶賛されたということだが、正にルルーシュの
『男と女』や『パリのめぐりあい』を髣髴とさせる作品だ。
ただし、物語を高校時代から始めなければならない辺りが、
この作品の弱点とも言えるところで、これを大人だけの物語
で描き切れたときが、本当のルルーシュの後継者と認められ
るときだろう。1963年生まれの石川監督にはそんな脱皮も期
待したい。
こういう作品は、観客の好き嫌いが激しく分かれるものと思
われる。だからといって観客に迎合する必要はないが、何か
観客を唸らせるような、そんな作品を期待したいものだ。
出演は、若いときの2人を演じる宮崎あおいと瑛太、大人の
2人を演じる永作博美と西島秀俊。他に姉役の小田切サユリ
など。いずれも嫌みのない演じ方で好感が持てた。
『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』“Proof”
1998年の『恋に落ちたシェークスピア』でオスカー主演女優
賞受賞のグウィネス・パルトローと、同作で監督賞の候補に
なったジョン・マッデンが再度手を組んだ作品。
劇作家のデイヴィッド・オーバーンが、ピュリツァー賞、ト
ニー賞を受賞した自らの原作を脚色し、アンソニー・ホプキ
ンス、ジェイク・ギレンホール、ホープ・デイヴィスの共演
で映画化された。
偉大な業績を残した数学者、しかしその晩年は精神を病んだ
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11月14日(月)
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