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On the Production
by 井口健二
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■東京国際映画祭2005(アジアの風・日本映画ある視点)
に迎えに来てくれるように頼むのだが…
ウォンカムラオは、タイではもっとも人気のあるコメディア
ンということで、その彼が比較的シリアスな演技に挑戦した
ということでも話題になった作品だそうだ。そしてその演技
力は、コメディの技量に裏打ちされた見事なもので、哀愁漂
う中年男の姿を見事に演じ切っていた。
僕も仲間入りする中年男にとっては、ファンタシーのような
お話で、その意味でも見ていて心地よかった。なお結末は、
本当はもっと大規模なものをやりたかったが、予算の都合で
断念したのだそうで、それを聞いて、ちょっと弱い結末も納
得した。
『長恨歌』
1990年代に、中国でもっとも影響力のある小説に選ばれた王
安憶の原作の映画化。ジャッキー・チェンがチーフ・プロデ
ューサーを務めている。
1947年から81年までの激動の上海を舞台に、激変する社会に
翻弄されながらも、力強く生き抜いた女性の物語。特に文化
大革命の時代には、香港や海外に逃亡する人々を見ながらも
上海に残り、いろいろな男にだまされたりしながらも、信念
を貫き通した一人の女性の生涯が描かれる。
共産主義の台頭や、さらに文革など、日本では計り知れない
辛苦に襲われる。それは中国という特殊な事情によるところ
も大きいが、その中を生き抜いて行った主人公の姿には、国
や社会を超えて尊敬の念を持たざるを得ない。
なお、以前に見たドキュメンタリーで、ジャッキー・チェン
の父親が本土に家族を残して香港にやってきたという話が紹
介されていたが、チェンがこの映画に関わったことには何か
意味があったのだろうか、その辺の事情も知りたくなった。
『呪い』
女流監督の李虹による「恐怖映画ジャンルに挑戦した」と称
される作品。しかし映画の内容は多少のショックシーンはあ
るが恐怖映画と言うほどのものではない。
第一に原題(詛咒)にもある呪いというものが、映画の物語
にはほとんど出てこない。むしろ映画は、照明師の男性を巡
るラヴストーリーに絡むサスペンスといった感じのものだ。
その点について監督は、上映後のQ&Aで、「実は自分では
『秘密』という題名にしたかったが、配給会社の意向でこう
なった」と発言しており、いろいろ事情はあるのだろうが、
僕としてはちょっと期待外れになってしまった感じだ。
その点を除くと、監督の演出も俳優の演技もしっかりしたも
のだし、特にヒロインのティエンを演じたティエン・ユアン
のダンスシーンなども素晴らしかっただけに、姑息なことを
した配給会社を呪いたくなる作品だった。
『この一刻』
『世界』のジャ・ジャンクー監督や、『呪い』の李虹監督も
含む中国第六世代の男女8人の監督による短編集。と言って
も全体で29分だから、それぞれは3分強のシュートショート
集という感じの作品だ。
3分強と言うと本当に短くて、ほとんど物語も描けないくら
いだが、監督それぞれに、情景をただ写しているだけのもの
や、それなりに起承転結のある物語に構成されているものま
で様々だった。
その中では李虹監督の卵を温める少年の話と、チアン・リフ
ェン監督の花嫁を巡る話が個人的には好きだが、意味不明の
作品や、あまり感心できない作品もあり、正直に言って、全
体的にはまとまりに欠ける感じで、ちょっと物足りない感じ
もした。
『恋愛は狂気の沙汰だ』
『おまえの勝手にしやがれ』のオ・ソックン監督の今年製作
の新作で、監督にとっては12年ぶりの第3作ということだ。
監督の出身地釜山を舞台に、2人の子供を抱えて離婚し、ホ
ステスとして働きながら子育てをしている女性の姿を描いた
作品。主演は『殺人の追憶』で主人公の恋人役を演じていた
チョン・ミソンの初主演作。
ホステスと言っても、ほとんど娼婦に近い仕事で、そん中で
の男との出会いやホステス同士の確執などが描かれて行く。
監督の12年前の第2作は『101回目のプロポーズ』の韓国
版だそうで、男女の関係を描くのは得意な監督のようだ。他
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11月12日(土)
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