ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■Movies−High 6
見事なものだったし、技術的なレベルはOKだが、その分、
結末が物足りなく感じられてしまったのは残念だ。    
                           
『痩せる薬』                     
娘がいじめに合っている家庭。嫌がらせの郵便物も数多く届
き、それを詰めた段ボール箱が部屋中に堆く積まれている。
そして遂に娘は復讐の手を打つが…           
いじめというのは当事者でないと判らないものだと思うが。
本作ではそれを戯画化して描こうとしている。それ自体はか
まわないが、どうせやるなら、もっと徹底的に段ボール箱の
数を増やして、徐々に家庭が浸食されていく様子や、最後に
押しつぶされそうになる姿まで描いたほうが良かったのでは
ないかと思った。正直に言って復讐の手口は実際にあったも
のだし、それを描くだけでは物足りないと感じるものだ。 
                           
『マリアンヌの埋葬』                 
何となく出会ってつきあった女子高生。つながりはそれで終
りのはずだった。その日、彼女から道端で見つけた猫の死体
の始末をしてくれと頼まれるまでは…          
遊びに明け暮れてドライに生きていると思われる女子高生。
しかし優しさも少しは残っていて、道端の猫の死体は放置し
ておけない。でも頼める相手は誰もいなくて、結局その日つ
きあった男性に電話をしてしまう。僕はこの映画の中に、そ
んな現代人の孤独を感じた。そしてそんな女性に、明らかに
下心抜きでつきあってやる、そんな男の優しさにも良いもの
を感じた。この線で人間を見詰めていってほしいものだ。こ
の作品も躊躇なく好きと言える。            
                           
『チェリーハイツ』                  
アパートの隣の住人が怪しい。ベランダの植物は枯れたし、
電気ガスは止められて変な匂いも漂ってくる。主人公は友人
を誘ってその部屋を調べようとするが…         
本当にありそうな物語。異臭がして入ってみると死体を発見
なんてニュースは日常茶飯時だ。そんな事態に遭遇した人物
を、如何にもありそうに描いている。最初はおっかなびっく
りでも、だんだん大胆になって行く。しかも入って見た部屋
は異常この上ない様子になっている。そんな捻りも結構楽し
めた。主人公が女子というのもありそうで、男だったらまず
こんなことはしない。そんな風にも考えた。       
                           
『扉よ開け』                     
オカルトホラー感覚の作品。主人公は愛猫家のごく普通の若
者だが、黒魔術の同好会にも入っている。その会に悪魔と取
り引きしたという謎の男が現れて…           
恐怖は映画の原点の一つというのは、この作品の監督も心得
ているようだ。それはその通りだが、安易にアクションやス
プラッターに逃げてしまっては、その志もあやふやになる。
本作では、特に主人公も含めて簡単に殺されすぎだ。これは
結末に対する監督の考え方もあると思うが、つまり監督の言
うところのハッピーエンドにしすぎなのだ。この物語は、本
来は悪魔との取り引き者は誰なのかを決めるものであり、そ
のためには全員がハッピーになってはおかしい。ハッピーエ
ンドは主人公と猫のチンペイだけに絞って、他は全員不幸な
エンディングの方が良かったと思うが、どうだろうか。  
                           
以上、12作品への感想とします。            
なお、SFホラー関係の作品には、自分なりの思い入れがあ
りますので、多少厳しいと思いますがごめんなさい。でも、
『扉よ開け』の監督も言っているように、ホラーは映画の原
点の一つでもありますので、できれば毎年挑戦してくれるこ

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09月28日(水)
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