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On the Production
by 井口健二
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■第95回
彼の父親がウェルズの遺族から、原作小説の再版権と1953年
にパラマウントが契約した映画化権を除く全ての権利を獲得
して実現したもので、19世紀末のヴィクトリア王朝時代のロ
ンドンを舞台にし、H・G・ウェルズが描いた世界をそのま
ま表現しているものだ。
 そして今回の映画化との関係では、昨年パラマウントとウ
ェイン側のマネージャーとの間で、権利の相互利用の契約が
結ばれ、その中でパラマウント側は映画に基づくサウンドト
ラックCDなどの商品化の権利を獲得したのに対して、ウェ
イン側は、ミュージカル版に基づくテレビ及び映画の映像化
権を獲得している。つまりこれによって、ミュージカル版の
映画化も可能になるようだ。またこれに関連して、新たなア
ルバムCDを含むボックスセットの発売も計画され、その中
に封入される予定の80ページのブックレットには、オリジナ
ルアルバムに触発されて、「ユニークで映像的な映画を作り
たい」とする1979年11月23日付のスピルバーグ監督からの手
紙も紹介されているそうだ。
 いずれにしても今回のスピルバーグの映画化については、
大ヒットの事実は認めるが、せっかくあそこまでの映像を描
きながら、何故19世紀末のヴィクトリア王朝時代のロンドン
を舞台にしなかったのかが残念に思えたもので、それがいつ
の日か、ミュージカル版で見られる可能性があることには期
待を持ちたいものだ。
        *         *
 お次は、いよいよ10月1日の新会社ワインスタインCo.発
足が目前になってきたワインスタイン兄弟の情報で、エルモ
ア・レナード原作の“Killshot”というミステリー小説を、
ダイアン・レイン、トーマス・ジェーン、ミッキー・ローク
の共演で映画化する計画が発表されている。
 この計画は、元々は“Shakespeare in Love”(恋に落ち
たシェイクスピア)のジョン・マッデン監督が今年1月に、
“The Wings of the Dove”(鳩の翼)の脚本家ホッセイン
・アミニ、“The Passion of the Christ”(パッション)
の撮影を担当したケイレブ・デシャネルらと共に、当時のミ
ラマックスと契約を結んでいたもので、その後のワインスタ
イン兄弟の独立で権利が兄弟に移管されていた。そして今回
は、新会社の正式発足に先駆けてその配役が発表され、10月
にトロントで撮影開始と予告されたものだ。
 物語は、不動産仲介業者の女性が夫と共に仕掛けた大きな
勝負に失敗し、さらに政府の目撃者保護プログラムの適用を
受ける羽目に陥り、殺し屋たちの標的リストにも載ってしま
うというもの。この夫婦をレインとジェーンが演じ、夫婦を
執拗に追う殺し屋の一人をロークが演じるようだ。
 なお、映画化の製作は“The Cider House Rules”などの
リチャード・グラッドスタイン主宰のプロダクションが担当
しているということで、全体的には文学的な作品になりそう
だが、製作総指揮はなぜかクウェンティン・タランティーノ
が担当しており、その微妙な影響力が面白くなりそうだ。
 因に、ワインスタインCo.の製作リストでは、本作の他に
も、続編の“Sin City 2”とホラー映画の“Wolf Creek”、
さらにスティーヴン・フリアーズ監督による“Mrs.Hederson
Presents”などがすでに掲載されているということだ。
        *         *
 お次は、ドッグ・ショウに出場する愛犬家の実体を描いた
2000年の“Best in Show”(ドッグ・ショウ)や、音楽業界
の裏側を描いた2003年“A Mighty Wind”(みんなのうた)
で、mockumentary(フェイクのドキュメンタリー)という新
分野を確立したクリストファー・ゲストとユージン・レヴィ
のコンビが、次回作ではいよいよ映画製作を題材にすること
が発表された。
 この作品の題名は、“For Your Consideration”。これは
アカデミー賞やその他の賞レース期間中の映画広告によく使
われるキャッチフレーズで、作品に少しでも注目を集めよう
とする決まり文句のようなものだ。そして物語は、小規模な

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09月15日(木)
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