ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■誰がために、風の前奏曲、セブンソード、ある子供、理想の恋人.com、イド
衆による武道の修錬を禁止する。そしてその禁令の下、武芸
者の摘発が始まり、それはやがて老若男女を問わない殺戮へ
と発展する。                     
そんな中、旧政府で処刑人と呼ばれた男が村の若い男女と共
に、伝説の剣士が集う天山へと救援を求める。そしてその剣
士たちと、救援を求めた3人も含めた7人にそれぞれ剣が託
され、彼らは天山を下りて殺戮を続ける軍団の討伐に向かう
ことになるが…                    
たった7人で1000人を越える軍団に立ち向かうのだから、そ
こにはいろいろな仕掛けや策略も登場するが、戦いの基本は
生身の人間。これをレオン・ライらのベテランから、若手ま
での多彩な顔ぶれが身体を張って演じ切る。       
特に、『ブレイド2』のアクション指導なども担当したドニ
ー・イェンが、本作で本格的な演技に復帰。また、本作のア
クション監督も務める大ベテランのラウ・カーリョンも剣士
たちのリーダー格で出演して、見事なアクションを見せてい
る。                         
一方、物語では、村人の側に内通者がいたり、高麗からの渡
来者で殺戮軍団の奴隷だった女の存在など、さまざまな過去
を背負った登場人物がドラマを作り上げて行く。     
上映時間は2時間33分だが、熾烈なアクションと複雑なドラ
マで全く飽きさせることがない作品だった。       
なお、プレス資料の中でハーク監督は武侠映画は西部劇より
SFに似ている語っており、その共通点は「人間の向上心に
対する願望」と説いている。なるほど頷ける意見だが、次は
この説に沿ってSF映画にも挑戦してもらいたいと思うのは
僕だけではないだろう。                
また、この映画の中では馬との別れのシーンがかなり丁寧に
描かれていたが、実は、僕はピーター・ジャクスンの“Lord
of the Rings”の映画化の中で、数少ない不満の一つが、
馬との別れのシーンが削除されたことだった。そのシーンが
違う監督の手でここに再現されたようで、嬉しく感じられも
したものだ。                     
                           
『ある子供』“L'Enfant”               
2002年『息子のまなざし』のダルデンヌ兄弟による監督作品
で、今年のカンヌ映画祭では彼ら自身2度目となるパルムド
ールを獲得した。                   
主人公は、20歳を過ぎても定職を持たず、街の悪餓鬼を手下
にしてこそ泥やひったくりで金を手に入れ、何となく日々を
過ごしているような男。その男の同棲相手に子供が出来、そ
の認知はするが、父親としての自覚など全く在りはしない。
そんな男が、それでも徐々に成長して行く姿が描かれる。 
雨上がりの水溜りにわざと足を踏み入れてみたり、細長い棒
で川面を掻き乱したり、そんな細かい描写がこの男の幼児性
を描き重ねて行く。確かにいい若者がという感じの描写では
あるが、同時にそれは今の日本のどこにでも見られる風景で
はないか…                      
確かに、このような幼児性を脱し切れない若者がどこの国に
も増えているという現実があるのだろう。だからこそ、少し
前ならただの若者の生態を描いただけの軽薄な内容に見える
ようなこの作品が、審査員に理解され大賞に輝いたとも言え
る。                         
ダルデンヌ兄弟の作品は、前作でも鋭く現実を切り取って見
せたものだが、前作では多分社会状況の違いが違和感として
残った部分が、今回はほとんど同じ状況のものとして理解す
ることが出来た感じがする。              
それだけ日本の状況が監督の描くベルギーの状況と似てきた
のかも知れないが、実際にこの主人公と同じ年代の子を持つ
親になってみると、この映画の状況に近い現実は身近に感じ

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09月14日(水)
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