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On the Production
by 井口健二
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■ステルス、SHINOBI、ボム・ザ・システム、あそこの席、@ベイビーメール、TKO HIPHOP、ヘッドハンター
内容的にはもちろん違法行為を描いたものだし、ドラッグな
ども頻繁に登場するが、作品として青春映画の手順をしっか
りと踏まえているところは、映画をよく判っている人たちの
作品という感じがした。
といっても、脚本監督は製作当時23歳のアダム・バラ・ラフ
のデビュー作だし、撮影監督は元ILMのスティール・カメ
ラマン、製作も本作が初作品という顔ぶれだが、いずれもニ
ューヨーク大学の映画科出身、基礎はそこで教え込まれてい
るということのようだ。
なお、映画の製作には実際のアーティストも多数協力してい
て、映画の中に数多くのグラフィティが納められているのも
見所のようだ。また、主人公の行動に絡んで、ニューヨーク
のいろいろなカルチャーシーンの様子が覗けるのも面白かっ
たし、青春グラフィッティとしても楽しめる作品だった。
『あそこの席』
中高生に絶大な支持を受けているという山田悠介の原作を、
『仄暗い水の底から』などの脚本を担当した中村義洋の監督
で映画化、脚本は『仄暗い水の底から』などを共同で手掛け
た鈴木謙一が担当している。
元々がレイトショウ用にヴィデオで製作された作品というこ
とで、正直あまり期待しないで見に行ったのだが、予想以上
にしっかりした作品に仕上がっていたのでびっくりしたとい
うか、和製ホラーの水準の高さを再認識した感じだった。
物語は、とある郊外の共学校が舞台。その一教室には呪われ
た席が在り、そこに座った転校生が次々に不幸に襲われると
いう。そして主人公の女子生徒は、都会の学校からそこに転
校して来て、その席が割り当てられるのだが…という、いわ
ゆる都市伝説ものと言えそうだ。
これに、担任の男子教師や、エキセントリックな音楽教師、
親切な男子生徒、学級委員長、それにちょっと意味在りげな
男女3人組などが絡む。
まあ、人物設定などはステレオタイプだし、話もよく在りそ
うなものなのだが、何というか話の盛り上げ方が巧いし、最
後にちょっと余分な仕掛けは在るが、物語の全体にはカタル
シスを感じさせる結末が在ることも良い感じだった。
生徒たちを演じるのは、いずれも20歳前のCMなどで活躍中
の若手俳優だそうだが、そこそこ自然体で演じており、見て
いて気になるところはなかった。まあ、それより上の年代の
俳優には、ちょっと演技し過ぎの感じも在ったが…
なお、本作は自殺を想起させるシーンが在るせいかR−12の
指定になっているが、自殺をテーマにしたものではない。
それから、音楽室からショパンのピアノ曲「別れの曲」の独
奏が流れ、音楽教師を根岸季衣が演じているのは、PFF出
身の中村監督から同じ出身の大先輩・大林宣彦監督へのオマ
ージュのつもりなのだろうか。
『@ベイビーメール』
上記の『あそこの席』と同じ原作、監督、脚本による作品。
製作会社も同じで、2本立てではないが、同様の公開になる
ようだ。
女性の携帯電話に呪いのメールが着信し、そのメールを開く
と、その女性は4週間後に腹を引き裂かれた猟奇的な死に見
舞われる。そして主人公の携帯電話にも、そのメールが着信
する…という、これも都市伝説という感じのお話だ。
なお、映画の中でも「呪いのヴィデオのパクリか」という台
詞が出てくるが、この作品では、ある意味『リング』の設定
を巧妙に利用している。この辺は、中田監督作品の脚本を手
掛けてきた脚本家たちの特権とも言えそうだ。
そして物語は、VTRが廃れ始めた時代に、新たな情報ツー
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08月14日(日)
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