ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■ナチュラル・シティ、50回目のファースト・キス、バースデー・ウェディング、ジャマイカ/楽園の真実、ダンシング・ハバナ、理想の女
                           
『ジャマイカ/楽園の真実』“Life and Debt”      
国際通貨基金(IMF)及び世界銀行の名の元にジャマイカに
対して行われた“経済支援”の現実を描いた2001年製作のド
キュメンタリー作品。                 
IMFと世銀は、数千億ドルの資金を発展途上国に投入し、
その経済の立直しを支援していると報道されているが、その
実体は高金利の貸し付けで各国の経済を縛り上げ、復興の道
を閉ざしている。                   
また世界貿易機関(WTO)は貿易不均衡の是正の名の下に、
実はアメリカの意向に従い、特に経済発展途上国に対して、
アメリカ経済にとって都合の良い世界の貿易を在り方を押し
つけている。                     
そんなメッセージがジャマイカのレゲエ音楽を伴奏に次々に
写し出されてくる作品だ。               
15世紀末にコロンブスによって‘発見'されたジャマイカは、
アフリカ人奴隷によって開拓され経済発展を遂げるが、やが
て19世紀に奴隷制度が廃止され、20世紀に独立を果たした国
家は、結局アメリカ主導の世界に隷属した存在でしかない。
その現実の姿は、ジャマイカ産バナナについて端的に説明さ
れる。                        
世界で最も美味しいとされるジャマイカバナナは最寄りのア
メリカには輸出されず、元宗主国のイギリスに97%が輸出さ
れている。これはアメリカの輸入規制によるもので、一方、
イギリスは元植民地の経済支援のため関税優遇策を実施して
いるのだ。                      
しかしアメリカは、自国の輸入規制は棚に上げて、イギリス
の採る関税優遇策をWTOに訴え、その廃止を求めている。
だがアメリカ国内ではバナナは生産されておらず、その背景
にはチキータ、デルモンテ、ドール等のアメリカ人経営果実
会社保護の政策があるという。             
しかもこのWTOへの訴えを表明するのが、ブッシュではな
くクリントンだという辺りが笑わせてくれる。クリントンは
カリブ諸国の経済発展を支援する処置の一環だと説明するの
だが…こんな歪んだ世界経済の実体が、いろいろな実例を挙
げて説明される。                   
確かに政治的プロパガンダの強い作品で、その描き方には多
少辟易するところもあるが、日本からは地球の裏側で世界経
済の名の下に行われている迫害の現実は、重く受けとめられ
る作品だった。              
                           
『ダンシング・ハバナ』“Dirty Dancing: Havana Nights”
1987年に公開された“Dirty Dancing”のリメイク。と言っ
ても、本作ではキャラクターも舞台も違えて、全くの新しい
作品になっている。                  
因に本作は、アメリカ版『シャル・ウィ・ダンス?』の振り
付け師の一人ジョアン・ジャンセンの実体験に基づいている
ということで、これはオリジナルとは別の物語だ。    
時代背景は1958年。その年の年末が近い頃、とある一家が父
親の転勤によってキューバに引っ越してくる。そこでの一家
の生活は、高級ホテルの部屋を自宅とし、メイドやボーイの
サーヴィスを受けるリゾート気分の何一つ不自由のないもの
だった。                       
その一家の2人娘の姉ケイティは18歳。学業優秀な彼女は、
転入したアメリカンスクールを半年で卒業したら、アメリカ
の大学に進学することを夢見ていた。          
そんなある日、スクールバスに乗り遅れて徒歩で帰宅しよう
とした彼女は、街角で激しく歌い踊るキューバ人のグループ
に遭遇する。そして、その中にホテルのプールサイドで働く
青年の姿を認め、彼の踊る姿に魅かれて行く。      
しかし、禁止された客との交際が発覚した青年はホテルを解

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05月30日(月)
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