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On the Production
by 井口健二
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■ライフ・イズ・ミラクル、ワイルド・タウン、HINOKIO、樹の海、マラソン
場することには常に異を唱える。そしてこの作品では自殺は
描いていない。ただこれが自殺でないことを、もっと明確に
して欲しかったところだ。               
苦言はこれくらいにして、上記以外で僕がこの映画の気に入
ったところでは、ほとんどがCGIで処理されるロボットの
映像は見事なものだ。影の処理などは当然のこととしても、
風景の中によく溶け込んだ丁寧な仕上げには満足した。  
それと、子役の中でジュン役の田部未華子の演出には感心し
た。特に、最初少年にしか見えない雰囲気から、徐々に少女
になって行く微妙な変化は、監督の演出の賜物と思うが、こ
れが第1作の秋山貴彦監督には、次の作品もぜひ期待したい
と思ったものだ。                   
                           
『樹の海』                      
自殺の名所と言われる富士山麓・青木ヶ原樹海を舞台に、自
殺を巡る4つのエピソードを綴ったドラマ。       
上の記事でも書いたように、僕は自殺という行為に対して非
常に強く嫌悪感を持つ。従ってこの試写状を受け取ったとき
にも、見るかどうか迷ったものだ。多分、たまたま時間が合
わなければ、試写会もパスしたかも知れないところだった。
しかし映画は、確かに自殺を描くし、自殺してしまう人間も
登場するが、全体は生きることを描いたもので、自殺という
行為を完璧に否定するものとして、納得して見ることができ
た。実際プレス資料を読むと製作の意図もそちらにあったよ
うだ。                        
映画は、本来は自殺の意志はなかったが犯罪に巻き込まれて
樹海自殺に見せかけて殺されそうになった男(萩原聖人)の
エピソードを狂言回しのように描きつつ、過重債務に陥って
自殺を図った女性を追う取り立て屋(池内博之)、自殺した
女性の過去を検証する探偵(塩見三省)、自らの行為に嫌悪
して自殺しようとする女性(井川遥)、の物語が描かれる。
しかしどれも結末として、希望を見いだし生きようとして終
ることは素晴らしい。                 
実は、久しぶりに不覚を取ってしまった。最近は擦れて、映
画で泣くことが少なくなってしまったが、こんなことで感動
できた自分が嬉しくなったりもした。          
まあ、ここでサッカーネタを出るとは思ってもなかったし、
他の人にはどうという話でもないのかも知れないが、映画の
全体を通しての小さな喜びを大事にしようという思想が、僕
にはここで一番集約されたと感じた。          
それは見る人によって別々かも知れない。ただ、この映画に
は、そういうエピソードがいろいろ織り込まれている。そし
て、それを大切にして生きていこうというメッセージが、見
事に描かれた作品と言えそうだ。            
昨年の東京国際映画祭−日本映画・ある視点部門で作品賞・
特別賞を受賞したことも頷ける作品だった。       
                           
『マラソン』(韓国映画)               
マラソンに才能を発揮した自閉症の少年を描く、韓国での実
話に基づく作品。                   
自閉症が脳傷害に基づく病気であることは、先日の日本での
調査でも、それが病気であることへの認知度の低さが問題に
なっていたが、恐らくそれは韓国でも同じようなものなのだ
ろう。ただしこの作品は、そのような問題とは別に、マラソ
ンを通じて患者自身が、そして周囲の人々が変って行く姿が
描かれている。                    
自閉症の患者が特異な才能を発揮するというのはよく言われ
ることだが、この作品の主人公は、記憶力は並み以上らしい
が特別と言えるほどではない。ましてや、マラソンに特別な
才能がある訳ではなく、逆にフルマラソンでは自己管理がで

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04月30日(土)
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