ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■サスペクト・ゼロ、ナショナル・トレジャー、コーヒー&シガレッツ、カナリア、MAKOTO、清風明月、失われた龍の系譜
今では、立場は逆転だろう。そんなことを思って見るのもま
た面白いところだ。                  
世間話のようなものや、珍妙な機械が登場したり、いろいろ
なシチュエーションが登場するが、一部には前の話が登場し
たり、微妙に脈絡があったりするところも面白く構成されて
いる。                        
ただ基本的には、コーヒーとタバコでのんびりとした時間が
流れて行く。ふと入った喫茶店で隣の席の会話が聞こえてく
る。そんな生活の休み時間を描いたような作品集で、映画館
でもそんな気分で楽しみたいものだ。          
                           
『カナリア』                     
オウム真理教を思わせるカルト集団に親と共に入信し、事件
によって児童相談所に収容され、親戚などに引き取られて行
った子供たち。しかし、そのほとんどの子供たちが現実に引
き戻される中で、ただ一人教えに留まった少年がいた。  
物語は、その少年が収容所を脱走し、祖父に引き取られた妹
を探して旅をする姿を中心に描かれる。         
現実の事件が起きたのが1995年、あれから10年が過ぎようと
している。今までにもオウムを扱った映画は作られているの
かも知れないが、僕自身がこの種の題材の作品を見るのは今
回が初めてだった。                  
映画では、教団内での生活の様子なども再現されており、あ
る意味、事件を見つめ直す仕組みにもなっている。現実の事
件では、どうしても被害者に目が行きがちなのだが、あれだ
けの集団の中には、当然このような子供たちもいた訳で、そ
れを描くことには意味がある。             
しかしこの作品では、主人公を演じる2人の子役、特に少年
と行動を共にする少女の演技がうま過ぎて、どうもそちらに
目を奪われがちなのが痛し痒しだった。         
それに、今も教団が生き残って事件を起こし続けている現実
を考えると、この作品の結末はちょっと甘いと言わざるを得
ない。実際に、逃亡犯も未だに捕まっていない訳で…でも、
この映画のように希望を持たせることが、作品として最善の
結末であろうことは理解する。             
また、物語の背景も田園から都会、さらに元信者たちが更生
する姿なども織り込んで変化に富ませており、その見せる努
力を買う。ただし、主人公の少年の心理的な変化を、あのよ
うに唐突ではなく、もう少し丁寧に描いて欲しかったという
感じは持った。                    
ただ、今の時点で事件を見つめ直すことは必要に思うし、こ
のような作品がもっと出てくる必要性は感じるものだ。  
                           
『MAKOTO』                   
霊の見える監察医を主人公にした郷田マモラ原作のコミック
スの映画化。監督は『踊る大捜査線』などの脚本家として知
られる君塚良一(初監督)、主演は1991年の東映やくざ映画
『本気<マジ>!』以来の映画出演となる東山紀之。   
霊が見えると言う設定の映画は、『シックス・センス』の成
功のお陰で五万と作られているが、本編もその1作。一応、
いろいろな捻りどころはあるが、それが本筋の物語と余り関
ってこないのが本編では残念なところと言うか、不満足なと
ころだ。                       
その本筋の物語は、主人公の妻の死を巡るもの。本来は伝え
なければならないことを残した霊だけが見えてくるはずの主
人公の前に、いつまでも妻の霊が見えるところに謎が隠され
ている。                       
という謎解きが本筋のはずなのだが、主人公の設定の説明が
不充分なのか、どうもその辺の緊張感がうまく描かれていな
い。これでは、ただ妻の思慕のようにも思えてしまう訳で、

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12月14日(火)
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