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On the Production
by 井口健二
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■僕の彼女を紹介します、CEO、陽のあたる場所から、三人三色、運命を分けたザイル
かった。
逆に考えると、この映像で長編は絶対にきつい訳で、その意
味でも見事に短編映画という感じの作品だ。実験映画的な雰
囲気もあるし、企画の意図が最も理解されている作品という
ことができるだろう。
これに比べると後の2作品は、どちらももっと長い作品の抜
粋というような感じで、見ていてもどかしさが感じられた。
もっと言いたいことがあるのに、それが表現し切れていない
感じなのだ。
もともとが長編映画の監督だから、そのテンポから離れられ
ないのかも知れないが、1本目の作品が見事だっただけに、
よけいに後の2本が物足りなく感じられてしまったようだ。
『運命を分けたザイル』“Touching the Void”
1985年、ペルーアンデスの6000m級の山、シウラ・グランデ
峰で起きた実際の遭難事件を再現したドキュメンタリードラ
マ。
映画は、その遭難を体験した2人のクライマーと、ベースキ
ャンプの留守番役で参加した男性の本人へのインタヴューで
始まる。従ってこの時点で観客は、どちらが遭難したかは判
らないが、取り敢えず全員が生きて帰還したことは判ってし
まう。
つまりこの作品は、いわゆるヒーローものの主人公が窮地に
陥るのと同様に、絶対に助かることが判って見ていることに
なるものだが、それが何とも、どうしてこんな状況から生還
できたかという感じで、ヒーローものと同様、正しく手に汗
握る作品だった。
実際のクライミングの撮影はヨーロッパアルプスで行われた
ようだが、ペルー現地の山岳風景と合さって、その美しさ、
過酷さは見事に表現されている感じだ。僕自身は登山の経験
を持たないので、その嘘は見抜けないが、恐ろしさは充分に
感じられたと思う。
なお、主人公の1人は片足を骨折した状態で下山してくるの
だが、本当の意味とは違うけれど文字通りの七転八倒で、僕
が今までに見た映画の中で一番痛そうな映画ではないかとも
思った。
10月14日(木)
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