ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459917hit]
■血と骨、パニッシャー、クリスマス・クリスマス、ナイトメア・ビフォア・クリスマス、巴里の恋愛協奏曲、ターンレフト・ターンライト
なお、今回の再上映では、日本では劇場未公開だったバート
ンの初期の短編“Vincent”と“Frankenweenie”も併映され
る計画だが、実は、僕はスケジュールの都合で日本語吹き替
え版の試写を見てしまったので、これらの作品を確認できて
いないのが、残念。
因に、日本語吹き替え版では、ジャックの声を、歌も含めて
市村正規が担当している。
『巴里の恋愛協奏曲』“Pas sur la bouche!”
オペラ作家アンドレ・バルドと作曲家モールス・イヴァンに
よる1925年初演のオペレッタを、1922年生まれのアラン・レ
ネが監督した2003年の作品。
なお、本作のオリジナルは1931年にも映画化されているそう
だが、今回の再映画化でレネは、上映時間との関係で楽曲の
削除や脚本のアブリッジはしたものの、他の楽曲や台詞には
ほとんど手を加えず、オリジナルのままで1920年代の舞台を
再現しているそうだ。
といっても、カメラワークや映像効果には、さすが大ベテラ
ンの手腕が発揮されているという感じで、舞台的な演出も随
所に取り入れて、見事な作品に仕上げている。また、映画の
開幕をトーキー初期の雰囲気にしているのも楽しめた。
主人公は、フランス人の実業家の妻。彼女は夫との関係も冷
めかけて愛人づくりに励んでいるが、夫は、女は最初に愛を
交わした男の元に必ず戻ってくるという信念の持ち主で、妻
の奔放な行動も意に解さない。
ところがその妻には、夫と出会う前のアメリカ旅行でアメリ
カ人と結婚したという過去があり、それはたまたま法律上の
手続きの関係で、フランスの戸籍に記載されていなかっただ
けなのだ。つまり、彼女が最初に愛を交わした男性は…。
そんな過去の秘密を隠し続けてきた彼女だったが、ある日、
夫が自宅に招待したアメリカの取引先の実業家が、その元夫
だったからさあ大変。しかもその元夫は、未だに彼女との愛
を諦めていなかった。
さらに、彼女の若い愛人には別の若い女性が言い寄るなど、
彼女を中心に見事なダブル三角関係が…。いやはや、さすが
フランスと言うべきなのだろうか、80年も前にこんなにも見
事なラヴコメディを作り上げていたとは…。
オペレッタなので歌曲もふんだんに登場するが、特にアメリ
カ人の歌には何となくアメリカ的な感じがするなど、これも
見事。そしてその歌を、大ベテランのサビーヌ・アゼマや、
『アメリ』のオドレイ・トトゥらが自ら歌っていることも注
目される。
それにしても、一昨年の『8人の女たち』など、最近のフラ
ンス映画に、ちょっと懐古趣味的なオペレッタ風作品が続い
ているのは興味深い。
『ターンレフト・ターンライト』“走左向・走右向”
台湾の絵本作家ジミー(幾米)原作の「君のいる場所」を、
香港のワイ・カーファイが脚色、ジョニー・トーと共同の監
督、製作総指揮で作り上げたラヴコメディ。
金城武、ジジ・リョンの共演で、台北が舞台の香港映画。
主人公の2人は、実は同じアパートの隣同士に住んでいる。
しかし建物の構造上、出入り口は別々で、しかも1人は左の
出口から出て左に向かい、もう1人は右の出口から出て右に
向かうため、2人がその場所で出会うことはない。
そんな2人が偶然公園で出会い、名前は名乗らず、電話番号
だけを交換するが、急に降った雨でその筆跡が読めなくなっ
てしまう。こうしてお互いを求め合う探索が始まるが、偶然
が偶然を呼んで、2人はいつも擦れ違うばかり。さらに2人
の出会いを妨害する連中も現れる。
[5]続きを読む
09月29日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る