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On the Production
by 井口健二
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■エイプリルの七面鳥、ゴースト・ネゴシエーター、沈黙の聖戦、ソウ、恋に落ちる確率、赤いアモーレ、アンナとロッテ、約三十の嘘
品に出会えないが、まだ52歳、もう一と花咲かせてもらいた
いものだ。
なお、お話はいつもの通りなので、あえて紹介はしないが、
勧善懲悪ハッピーエンドの展開は、安心して見ていられる。
『ソウ』“Saw”
今年2月の米サンダンス映画祭で絶賛され、カンヌ映画祭の
マーケットで世界中の映画会社が飛び付いたという作品。
10月末の日米同時公開では、アメリカはライオンズゲートの
配給で2000館の拡大上映が行われ、日本も全国一斉の公開が
決まっている。
荒廃した、巨大なバスルームらしい白いタイルで覆われた空
間。その対角に位置するパイプに鎖で繋がれた2人の男。そ
の間に転がる死体。そして一方の男に、他方の男を殺せば助
けてやるという指令が下る。それは連続殺人鬼が仕掛けた巨
大なパズルだった。
サイコパスもので、いかにも異常なシチュエーション、作為
ありありの展開が宣伝の売りとなる作品。従来この手の作品
では、話題性はあるが、ヒットはそこそこというのが常識だ
ろう。それを敢えて拡大公開に踏み切るのは、興行者が今ま
での作品にない面白さを感じたからに他ならない。
作品を作り上げたのは、原案・監督のジェームズ・ワンと、
原案・脚本・主演のリー・ワネル。僕が見た試写会では、2
人の挨拶と上映後ティーチインが行われた。
2人はオーストラリアの映画学校の同級生ということで、プ
レス資料ではワネルがワンを立てている風が見えるが、実際
の作品には、ワネルの脚本の見事さが光る。
ティーチインでの質問にもワネルが主に答えていたし、脚本
に関する質問の答えで、撮影中に細かな修正はしたが、決め
のせりふは絶対に動かさなかったという辺りには、自信があ
ふれていた。
この脚本に、8分のDVDを添えたオファーに対して、ケア
リー・エルウェズ、ダニー・グローヴァー、モニカ・ポッタ
ーらが応じたのだから、脚本の完成度は本当に高かったとい
うことだろう。
物語は、閉じ込められた2人の男の行動と、過去の経緯の説
明、同時進行で進む別の事件などが交錯するが、それらの結
びつきが巧みで混乱が無く、これほど判りやすい映画は見た
ことがないと思えるほど上手く作られていた。
R−15指定なので、多少血みどろのシーンはあるがスプラッ
ターというほどではない。
なお、アメリカでは突っ込みどころの沢山ある映画というこ
とで、ティーチインでもその手の質問が出ていたが、ほとん
どは枝葉末節の意見だった。
すでに、業界の人にもリピーターが出ているようで、これは
ちょっと行けそうな感じだ。
『恋に落ちる確率』“Reconstruction”
昨年のカンヌ映画祭でカメラ・ドールと批評家週間最優秀作
品賞を受賞したデンマーク製作の作品。
舞台はコペンハーゲン。恋人もいて友達にも恵まれた男が、
ふと行き違った女性に魅かれてしまう。女性は作家の妻で、
夫の講演会に同行してスウェーデンから来ていたが、夫は作
品の仕上げにも忙しく、相手にされずに一人で街を彷徨って
いたのだ。
そんな2人が出会い、恋に落ちるが、女とベッドを共にした
男が自宅に戻ると、そこでは彼が住んでいた部屋そのものが
消失し、友達も恋人さえも彼の存在を記憶していない。別の
女を愛したことが、彼の住む世界そのものを変えてしまった
ようだ。
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09月14日(火)
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