ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■ぼくセザール10歳半1m39cm、MIND GAME、マッハ!!!!!、CODE46、好きと言えるまでの恋愛猶予
今年のオスカー助演女優賞候補になったサマンサ・モートン
と、助演男優賞を受賞したティム・ロビンスの共演作品。 
体外受精やクローン技術が横行する世界。コード46は、こ
の時代に即応した国際的な取り決め。それに従うと、男女は
妊娠に至る前に遺伝子の検査が義務付けられ、遺伝子が25%
以上一致するカップルの妊娠は厳禁。違反者には過酷な処罰
が待っている。                    
主人公は、その世界を効率良く取り締まるために作られた制
度=パベル(滞在許可証)の発行を独占する企業の捜査員。
ある日、上海の工場で不正の行われていることが発覚し、彼
はその調査のため上海に向かう。そして、そこで一人の女性
に巡り会う。                     
女性は25歳、彼女は毎年の誕生日に不思議な予知夢を見てお
り、今年その予知夢が終局を迎えるかもしれない誕生日に、
彼と巡り会う。                    
SFでしか有り得ない出来事や運命を描く作品は、相当に上
手く描かないと、観客に違和感を抱かせる恐れが多い。この
作品もそんな一篇と言える。特殊な世界観や設定のための規
則、これらが違和感を生じると映画は台無しになる。   
しかしこの作品では、主演の2人の演技力もあってか、違和
感の生じる前にドラマに入り込めたような感じもした。正直
なところは、そんな世界観や設定を外しても2人の関係は描
けたのかも知れない。                 
ただしその設定が、さらに2人の運命を過酷なものにしてい
る。そしてそこに、この作品のSFであることの所以が存在
している。そこが素晴らしい、とも言える作品だった。  
なお、モートンは『マイノリティ・リポート』のプレコグ役
でも知られる女優だが、ロビンスに抱かれるシーンでは、そ
の小柄なところが印象的だった。ところが、映画の中に出て
くる彼女の身上書では、身長165cmとあり、一体ロビンスの
身長は幾らだったのかと、今更ながら驚かされた。    
                           
『好きと言えるまでの恋愛猶予』            
               “La Bande du Drugstore”
1966〜67年を背景にした青春映画。主人公の男性は18歳とい
う設定だから、1948年の生まれ、女性の方の年齢は出てこな
かったが、いずれにしてもこの映画が描いているのは、僕と
ほぼ世代の人たちの物語ということになる。       
しかも男性の部屋には、当時のSF映画専門誌Midi/Minuit
Fantastiqueが無造作に置かれ、本棚にはBarbarellaの単行
本が見えている。また、女性の部屋の本棚にはラヴクラフト
があるといった具合。さらに古本屋で出会った二人は、ジュ
ール・ヴェルヌや未来文庫のUFOという本の話をする。 
僕自身、当時すでにSFファンだったから、この映画を見て
いると何か当時の自分が描かれているような感じもしたが、
実は映画で描いていることは、当時は本当にSFが若者カル
チャーの先頭にいた時代だった、ということなのだろう。 
そして物語は、このような男女2人が互いに好きであること
が意識していながら、もう一歩を踏み出すまでの悶々とした
8カ月が描かれる。ここで現代の若者なら、こんなにも悶々
とすることはないのだろうが、当時はそういう時代だったと
いうことだ。もちろん映画にも、もっと進んだ行動をする若
者は描かれるが、これが青春と言えた時代の物語だ。   
とは言うものの、これを現代の若者たちが見るとどう感じる
のだろうか。因に、原作者で脚本も書き、本作で監督デビュ
ーを果たしたフランソワ・アルマネは、1951年の生まれだそ
うだ。                        

05月31日(月)
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